用語と手続き

住宅の定義と可分不可分、ひとつの土地に住宅を2棟建てるには

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この記事のポイント
  1. 建築基準法の「住宅」の定義
  2. 敷地分割分筆の違い
  3. 「1の建築物」の判断基準

田舎や郊外でよくあるのが、実家の敷地内に息子or娘夫婦の「住宅」を建てるという要望。

建築基準法としては1敷地1建築物が原則なので、1つの敷地内にそれぞれが独立可能な(用途上可分という)2つの住宅が存在することは許されません。これは、所有者・管理者が同一人物であっても同じです。

建築基準法施行令 第1条

この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 敷地  1の建築物又は用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地をいう。
二 地階 (以下省略)

でも実際には建ててますよね。

どうやってるんでしょうか?

先に書いてしまうと、この問題の攻略方法は大きく3つあります。

  1.  住宅の定義の逆をつき、用途上不可分とするルート
  2.  敷地を分けて、2の敷地とするルート
  3. 同一棟増築として、1の建築物とするルート

それぞれ考察していきます。

住宅の定義とは

実は、建築基準法上に「住宅」の定義はありません。
関係する法律上の定義であるとすれば、品確法に登場するくらいです。

住宅の品質確保の促進等に関する法律 第二条

この法律において「住宅」とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分(人の居住の用以外の用に供する家屋の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。

「まぁ、せやな」という感じであまりピンときませんよね。しかも品確法は建築基準法関係規定ではないため、直接は建築確認に関係してきません。

では、建築基準法をつかさどる特定行政庁は「住宅」をどのように定義づけ、用途上可分or不可分の判断を行っているのでしょうか―。

判断材料として有力なのは「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2017年度版 日本建築行政会議編集」です。そこに住宅の定義についての記載があり、「トイレ+台所+浴室」の3点セットが設けられたものは住宅として判断するとしています。

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 」は特定行政庁も判断に広く利用していて、根拠としてはけっこう強いです。


つまり、逆にこの3点セットのいずれかをあえて欠けさせることで、定義上は住宅ではない、いわゆる「離れ」として取扱うことで用途上不可分とすることができるわけですね。

ただし!この考え方は原則であり、特定行政庁により判断が違うことがあります。

例えば、M市の場合、トイレは容易に設置&撤去できるとの理由から「台所+浴室」の2点セットがそろった時点で住宅として取扱うとしています。つまり、トイレの有無は関係ないとしています。
「台所+浴室」で離れとして建築した後、無確認でトイレを増設する事例が多く見受けられたのでしょうか。

また、T市の場合は、3点セットのうち浴室は欠けても住宅として取扱うとしています。つまり、浴室の有無は関係ないとしています。
これは、トイレと台所は生活に必ず必要だけども、風呂は無くとも銭湯を利用するような生活は割と多くあることを考慮してのことでしょうか。

まとめると、表のようになります。「台所が無い」というのは離れとして取扱うにはかなり有力な方法かも知れません。

  浴室トイレ  トイレ台所  台所浴室 浴室トイレ台所
 M市の場合 離れ離れ住宅住宅
 T市の場合 離れ住宅離れ住宅

ということで、住宅の離れを計画する時は水回り3点セットの一つを欠けさせることが原則ですが、最終的には所管の特定行政庁への確認が必要と覚えておけば間違いなさそうです。

土地の「分割」「分筆」の違い

「水回り3点セットが欠けた離れじゃなくて、完全な住宅を建てたい!」という場合は、確認申請上でだけ机上で敷地を「分割」する、または、それに加えて登記上2つの敷地に「分筆」するなどして、令1条に定義する「敷地」を2つに分けてしまう必要があります。

それぞ考察してみます。

「分割だけ」のメリット/デメリット

これは、確認申請の際、机上(配置図)で敷地の中に任意の境界線を引き、それぞれ分けた敷地の建築物が建築基準法を満たしていればOKというお手軽な方法です。登記の為の測量や分筆が必要ないので費用も時間も短縮できそうです。

建築基準法上の「敷地」と登記上の「筆」はまったく別の概念ですので、確認申請書に記載する住所については「〇〇町△△番地の一部」として記載すれば何の問題もありません。

ただし、デメリットもあります。

抵当権等の所有権以外の権利については、土地の一部のみにそれらを設定することができません。つまり、土地の一部に家を建てて住宅ローンを組んだ場合には、土地にも抵当権が設定されることが多いですが、分筆していないと土地の全部に対して抵当権がかかってきてしまいます。

分割の場合の多くは、土地の所有権は親が持ったままになるので、相続者が複数いる場合は敷地の分割を受けて家を建てた子が、親の死後にその土地を相続できるように遺言を残すなどしたほうがよいでしょう。

「分筆もする」メリット/デメリット

分筆は、登記簿上2つの土地に分けることをいいます。敷地の分割とは異なり、分けられた2つの土地が登記上別々の土地になります。そのため、分割では出来なかった下記のようなケースに対応できます。

  •  相続した土地を共同相続人間で分割して所有するケース
  •  土地の一部を他人に売却するケース
  •  土地ごとに異なる権利や地目を設定、登記したいケース
  •  土地の評価額を下げて、節税したいケース

上記のメリットは、「息子・娘夫婦の住宅を建てたい」という目的だけを達成するには直接関係していませんが、建築は権利や資金の制約なしには出来ませんから、大事なところです。

デメリットとしては、測量や登記は土地家屋調査士等に依頼する必要があり、時間と費用がかかることでしょう。

また、「敷地」が小さくなることで注意すべきことは、容積率・建ぺい率が厳しくなることだけでなく、境界線から新たに延焼ラインが発生するので、外壁や開口部の防火性能が求められる場合があります。(分割だけの場合と共通のデメリット)

1の建築物の定義とは

初めから可分不可分の話題が出ないように、そもそも論で法律を突破する方法もあります。

というのは、1棟として増築してしまえば1敷地1建築物なので法律上は何の文句もないはずです。ところが、「住宅」と同様「1の建築物」についても建築基準法上の明確な定義がありません。

では、どのような場合に1の建築物として取扱うかという話になりますが、(この話を続けるとすごいボリュームになりそうなので詳しくは別の記事にまとめますが、)以下の3つの判断要素を満たしていれば、基本的には1の建築物として取扱います。

・外観上の観点
 ⇒地上から目視できる部分ではっきりと繋がっていること。

・構造上の観点
 ⇒EXP.Jによる接続も含め、一体の建築物となっていること。

・機能上の観点
 ⇒建築物の使用、管理が一体的に行われていること。
  (相互の往来を日常的にできるとか、共用の設備を有するとか)

ですので、いわゆる二世帯住宅はちょっと嫌だな、と感じる方にとっても、ほぼ独立した住宅同士が渡り廊下で繋がっている程度でも1の建築物として計画できそうですよね。プライバシーも確保できそうです。

ただし、1棟増築については、既設建物に違反があったり無確認建築物だったりすると難易度が一気に上がります

そのような場合、「既設部分の適法性を証明」⇒「現行遡及の部分を考慮しながら増築部分を計画」という流れになりますが、そもそも既設部分の適法性を証明するのが難しいことが多いため、指定確認検査機関では確認申請を受け付けてもらえない可能性があります。

よって、この場合は特定行政庁へ相談するところから始まり、建築主事に対して法12条5項報告をするところから入っていく必要がありそうです。

まとめ

今回は実家の敷地内に住宅を建てるための法規とその周辺について考察しました。
方法としては以下3つのルート。

  1. 「離れ」として計画することで、用途上不可分にする
  2. 敷地を分割(必要なら分筆も)して、敷地自体を2つに分けてしまう
  3. 「1の建築物」として増築の計画とする

やはり経済的メリットが大きいためか、実家の土地へ新居を建てたいというお客さんは結構います。1~3のルートの、メリット・デメリットを整理して、お客さんにとって最適な提案ができるようにしておきましょう。

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