用語と手続き

確認済証ない!敷地内違反建築物の処理方法【12条5項報告】

用語と手続き
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この記事のポイント
  • 実態違反と手続き違反の違い
  • 法第12条5項報告の流れ
  • 確認申請が無い建築物などの処理 運用実例

敷地内に確認済証が無いなどの違反建築物がある場合の処理方法をまとめます。

建替えの依頼を受けた敷地内に、無確認の倉庫やカーポートがあるんだけど、このままだと確認申請が通らなかったり、行政指導を受けることがあるの!?

まず、大前提知識として整理しておくと、建築基準法は原則、同一敷地内のすべての建築物が適法な状態でないと増改築を認めません。

ただし、違反建築物があるからと言って既に建ってしまった建築物をすぐさま解体というのは実現性が無いので、建築行政を司る特定行政庁へ適法の旨や改善計画を報告し「お許し」をもらうことで、確認申請などの法手続きを進められる状態には出来ます。

今回は、そのいくつかの手順と、違反についての基礎知識を復習しながらまとめます。

なお、確認済証・検査済証が無い建築物の同一棟増築の手順については別記事にします。今回は、申請建物とは別棟で、違反建築物があった場合の処理方法です。

違反には「実態違反」と「手続き違反」がある

違反建築物といっても、「実態違反」「手続き違反」の2種類があります。もちろん、どちらも犯している建築物もあります。

実態違反とは

実態違反は単体規定・集団規定など建築物の仕様や形態を制限する規定に抵触している状態をいいます。

よくある具体例としては、以下の通り。

  • 間仕切りを追加したため、採光・換気・排煙・非常用照明などの規定に抵触した。
  • 確認不要の増築や模様替えにより、防火避難規定や道路後退、高さ制限に抵触した。

法12条1項の定期調査報告の対象建築物(特定建築物)であれば、一定期間ごとにその適法状況について特定行政庁に報告する義務があるのでバレちゃうのですが、特庁が特別に指定しない限り共同住宅を含む住宅系の用途や平屋の建築物については報告対象ではないので、実際のところ、実態違反をしていても発覚することはまずないでしょう。

※法12条1項の定期調査報告について詳しくは↓の記事へ

手続き違反とは

手続き違反は確認申請や必要な許認可を経ずに建築行為をしてしまった状態をいいます。

よくある具体例としては、以下の通り。

  • 確認申請が必要な規模の倉庫やカーポートを無確認で設置してしまった。
  • 確認済証はあるが、完了検査を受けずに建築物を使用している。
  • 用途変更の確認申請を経ずに用途変更してしまった。

特に、既製品の物置やカーポートなんて意図的に確認申請出してないことの方が多いではないでしょうか。ひどいもんです。

平成12年ごろでも完了検査率は特庁で58%、検査機関で44%と…絶望的な数字となっているのが現状です。検査済証が無い建築物は、手続き違反をしているだけでなく、当該建築物の適法性を証明することができません。(実態違反してないと言い切ることができない。)

実際、既存ストック活用のニーズが高まる昨今、増改築をしたい建築物の検査済証が無くて苦しむケースも多いのですよね。

なぜ違反建築物が発覚するのか

敷地内の違反建築物が特定行政庁にバレるのは主に以下のときです。

  • 確認申請をしたとき
  • 法43条などの許認可申請をしたとき
  • 都市計画法60条証明の申請など関係規定に係る手続きを行ったとき
  • 自治体などが運用している補助金関係の申請を行ったとき
  • 第三者から通報があったとき
  • 特定行政庁が違反建築物防止週間などのキャンペーンを行っているとき

審査機関が建確を下ろしたら、特庁へ報告する義務がある

建築確認は原則、「申請建築物」が建築基準法へ適合しているか確認するものであるため、審査機関が別棟の既存建築物について確認済証の有無や単体規定まで調査・確認を行うということは通常ありません。(計画建物の敷地に影響する集団規定は当然審査します。)

なので、申請外の建築物について手続き違反や単体規定違反があったとしても、この段階で発覚することはないですね。

しかし、法6条の2第5項の規定により、審査機関は確認済証を交付したら、その内容を確認審査報告書として概要書と共に特定行政庁へ提出する義務があります。

報告を受けた特庁は、内容をチェックするだけでなく、省エネ法などの他法令を含めた許認可届出の提出状況と内容照合、道路種別や官有地との位置関係のチェックなどなど、検閲をかけます。

そのときに、過去の同じ敷地の概要書をチェックされると「おや、この倉庫、確認出てねぇな。」といった具合に手続き違反が発覚してしまうのです。各年の航空写真を見比べると、建替えの変遷が分かりやすいので、それによって発覚することも。

過去の建築計画概要書はほとんど全て、特定行政庁に記録として残っていますので、申請敷地内に確認処分されていない建築物があると一発で分かります。

そして、無確認建築物の適法状況について12条5項報告を求められ、調査をすることで実態違反も芋づる式に発覚するといった流れが多いです。なお、すでに下ろされた確認済証が取り消されることはよほど無いと思いますが、違反建築物に対する改善計画(報告)を求められるなどの行政指導を受けることに変わりありません。

確認申請だけでなく、建基法・都計法の許認可申請をしたときも同様のルートで発覚します。

無確認の建築物について、検査済証が無くても確認済証さえあれば12条5項報告までは求められない場合が多いです。(前述したとおり、巷の建築物は検済が無い方が多いくらいなので…。全部に報告を求めていたらエラいことになります。)

補助金の申請で適合状況チェックされる場合が

自治体によっては、福祉施設や商業施設の整備費用として補助金を出す事業をしていたりします。

自治体としては違法な建築物に補助金を出すのはマズいわけですから、補助金事業の所管課が建築指導課などの建築行政を行う部署以外の場合にも「敷地内に無確認建築物はないか」ぐらいのチェックは行うはずです。

クレーマー住民からのタレこみはよくある

看板を掲示せずに工事をしているが、確認申請は出ているのか?

通学路の擁壁が高いんだけど、安全性は確認されているの?

近隣が建築しているのが気に入らないので、違反を探して指摘してやる!


役所には、毎日のようにこんな電話がかかってきます。中には建築行政に詳しい方もいるので、違反であることを分かってタレこんでくる場合も結構あります。

特庁としては、放置して何か問題が起きたらそれこそ問題ですから、可能な範囲内で調査をします。そこで違反があれば発覚します。

12条5項報告とは

特定行政庁は、法12条5項により、建築主等に対して建築物の適法状況について調査し報告させることができるので、違反処理によく用いられます。

建築基準法 第12条
1~4 (省略)
 特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、次に掲げる者に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途、建築材料若しくは建築設備その他の建築物の部分(以下「建築材料等」という。)の受取若しくは引渡しの状況、建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況又は建築物の敷地、構造若しくは建築設備に関する調査(以下「建築物に関する調査」という。)の状況に関する報告を求めることができる。
 建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、建築材料等を製造した者、工事監理者、工事施工者又は建築物に関する調査をした者
 第77条の21第1項の指定確認検査機関
 第77条の35の5第1項の指定構造計算適合性判定機関

しかし、特庁は基本的に違反を確信したときにしか12条5項報告を求めることはありません。
その理由は以下のとおり。

  • そもそも特庁は能動的に違反を取締まりに行く”建築警察”ではない
  • 特別な場合を除き、自ら個人の敷地や建築物に立ち入って調査する権限がない
  • 調査は建築主の費用負担なので、早とちりはできない
  • 違反”かも知れない”建築物を相手にしていたら業務がパンクする

分かりますよね?違反を知り得ていながら放置して何かあるとそれこそ問題…。逆に、”公に違反を知り得る状態”でなければ、特庁は能動的には動きません。(動けません。)

12条5項報告の様式や報告書名は特定行政庁によって全然違います。適合or不適合について、表でまとめさせたり、確認申請書を準用したものだったりするので、各自治体のホームページで確認しましょう。

基本的には、報告内容が確認できる配置図・平面図・立面図・断面図といった一般図面などの資料は必要ですが、建築物の規模等によって必要書類にバラつきがあります。

この12条5項報告によって、建築基準法の実態違反が見つかると、当然のことながら改善計画を立てさせられます。改善計画は「いつ、どのような方法で適法させるか」という計画。(すぐ対応できるものであれば、すみやかに対応のうえ改善報告を提出します。)

しかし、法令には何年以内にどうしなければならない、という規定はありませんから、どのような対応になるかは「違反による周囲への影響」や「悪質性」を勘案した特庁の判断に委ねられます。

実際の運用としては、不特定多数が使用しないプライベートな建築物の用途であって悪質な集団規定の違反が無い限り、「〇年△月までに違反について◇◇の方法で適法させます。」という報告や改善計画に対して「報告の違反を確認しましたから、約束通り改善してくださいね。」という通知が特庁から建築主あてに発行される。といった流れが多いでしょう。

そして、この〇年後に実際に特庁が確認しに行くかというと、それもまた特庁の判断によりますが、これにてひとまずは特庁との協議終了ということで、確認申請に進めるわけです。

違反処理の運用実例

それでは、敷地内に違反建築物がある場合の処理実例を見ていきましょう。

分割して敷地外へ追い出しても、結局バレる。

無確認の既設建築物(例えば、倉庫とか)の発覚を恐れて、申請建物だけが存在する敷地設定で分割して確認申請を出したとしましょう。

確認検査機関は、申請敷地についての確認を行いますので、既設建築物についてはノータッチで確認済証を交付してしまいます。

しかし、確認検査機関は確認済証を交付したら、その内容を概要書と共に特定行政庁へ報告する義務がありますから、その段階で特庁が過去の概要書や各年代の航空写真をチェックし「既設建築物についての違反処分”逃れ”」と判断されると、既設建築物について適法をチェックするために12条5項報告を求めることになります。

なお、確認済証が発行された後であっても、12条5項報告をはじめとした行政指導があることに変わりはありません

せっかく分割して、無駄に延焼ラインが生じたり、建ぺい容積を厳しくしたのに、違反がバレてしまったら無駄ですよね。

既存不適格という主張は100%否定できない限り通る。

住宅の母屋(セットバック違反)に離れを増築するパターンを考えてみましょう。

もし、既設建築物が基準時よりも前から建っていたとしたら、既存不適格建築物として違反指導の対象になりません。ので、建築主へのヒアリング、登記簿、写真、課税履歴などから、基準時以前に建築物が建っていた証拠を探します。

しかし実は、この「〇年から建っていた」という議論については、それっぽい資料はあるけども証明はできない場合や、100%否定することはできない、といったケースがほとんどです。

誰も証明・否定することができない、という場合には、特庁は基本的に建築主・設計者の主張を否定しません。確認申請で虚偽があっても確認済証が下りる感覚と似ていて、「お前が言うならそうなんだろう。もし虚偽が発覚したら指導するけどな。」というスタンスです。

特定行政庁には、確認台帳に記載が無かったり、概要書が保管されてないかもしれない時代があります。(だいたい昭和40年代以前…?)それ以前の建築物については、100%確認が出ていないとも言い切れないので、12条5項報告を求めることまではしなかったりします。

隠蔽部分は「不明」として処理できる。

調査を行う建築士の立場で見ると、基礎や外壁の仕様、筋交いやブレースの位置など、破壊しないと確認できない部分は必ずあります。実際、これらの部分について全て破壊して確認するのは不可能なので、報告としては「分からない」とするしかないと思います。

特庁が12条5項報告をさせる主旨は「建築主に手続き違反をしたことについて認識してもらい、今後違反しないよう注意する」という側面が強く、実際の運用では、完全に適法であると言えなくても「不明部分はあるが概ね適法(もしくは安全)」として、調査した建築士が認める場合には、それにて特庁との協議終了とする場合が多いと思います。

じゃあ違反したもん勝ちかとも思いますが、実際に建築士に調査させる時点で費用負担は発生していますし、「これ以上追求して何になる」という考えもあります。

顛末書のみで済むケースもある。

既製品のカーポートやプレハブ物置のような仕様が明らかな建築物について、12条5項報告を逐一求めていると、特庁の業務はパンクします。

そのような場合は、「確認申請を怠って申し訳ありませんでした。今後は適法に努めます。」といった内容の顛末書を提出させ、協議終了とする例もあります。手続き違反のみと思われる場合は、建築主に違反の事実を公式に認めさせることが大事なので…。

でも、それこそやったもん勝ちですよね。無確認カーポートや無確認倉庫が横行するわけです!

まとめ

敷地内に手続き違反・実態違反の建築物がある場合の処理方法について解説しました。

違反建築物の処理・指導は建築行政の仕事なので、特定行政庁とのやり取りが必要になります。確認申請先の検査機関に相談しても「特庁と打合せしてください。」と言われることがほとんどだと思います。

特定行政による違反建築物の処理方法としては、

  1. 法第12条第5項による報告を建築主に求め
  2. 建築物の適法状況や安全性を審査し
  3. 何らかの指導を行う

といった流れを経て違反処理をしようとしますが、軽微な場合は顛末書や口頭指導のみで済ませるケースもあります。

建築士としては、違反建築物のある敷地での設計依頼を受けたら、焦らずにまずは特庁の窓口に相談すること。下手に違反指導を回避しようとすると返って自分の首を絞めることもあります。

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