用語と手続き

【用途変更まとめ】工事ありorなし法遡及の考え方&確認申請不要の場合の注意点

用語と手続き
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この記事のポイント
  • 確認申請が必要な(法6条が準用される)用途変更とは
  • 法6条の準用すなわち建築基準関係規定への適合義務が発生
  • 既存不適格建築物の用途変更に対して遡及される規定とは
  • 基準時の考え方

お疲れ様です、一級建築士のくるみです。(twitterはこちら

今回は、用途変更に係る確認申請と法遡及の考え方を整理します。

用途変更のために、まったく工事は行わない予定なんだけど、それでも確認申請は必要?

確認申請は不要だけど、法規チェックに自信が無いから逆に不安。

2019年(令和元年)の法改正で200㎡以下の特殊建築物の建築や用途変更について、確認申請が不要になり、その目的通り「一戸建ての住宅」から「シェアハウス、物販店舗、児童福祉施設等」に用途変更したいとの相談が増えました。

しかしながら、確認申請が不要だからといって「何でもあり」ではありません。既存不適格かどうかで法遡及の範囲も変わりますし、耐火要件などの各緩和も理解していないと違反建築になってしまう可能性があります。

確認申請(用途変更)を出すにしても、基準時の考え方や、既存不適格項目の取扱いについて誤解している方、けっこう多いです。違反は設計者だけでなく施主のリスクでもありますよ!

実務者必須の知識なので、根っこから押さえておきましょう。

根拠条項と用語の整理

用途変更に係る条文は「法87条」と「施行令137条の18,19」が全てです。ひとまず、本体である法87条を俯瞰しましょう。

第八十七条(用途の変更に対するこの法律の準用)
 建築物の用途を変更して第6条第1項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第3項、第5項及び第6項を除く。)、第6条の2(第3項を除く。)、第6条の4(第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条第1項並びに第18条第1項から第3項まで及び第14項から第16項までの規定を準用する。この場合において、第7条第1項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。

 建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては、第48条第1項から第14項まで、第51条、第60条の2第3項及び第68条の3第7項の規定並びに第39条第2項、第40条、第43条第3項、第43条の2、第49条から第50条まで、第60条の2の2第4項、第60条の3第3項、第68条の2第1項及び第5項並びに第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定を準用する。

 第3条第2項の規定により第27条、第28条第1項若しくは第3項、第29条、第30条、第35条から第35条の3まで、第36条中第28条第1項若しくは第35条に関する部分、第48条第1項から第14項まで若しくは第51条の規定又は第39条第2項、第40条、第43条第3項、第43条の2、第49条から第50条まで、第68条の2第1項若しくは第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定(次条第1項において「第27条等の規定」という。)の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。
 増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合
 当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合
 第48条第1項から第14項までの規定に関しては、用途の変更が政令で定める範囲内である場合

 第86条の7第2項(第35条に係る部分に限る。)及び第86条の7第3項(第28条第1項若しくは第3項、第29条、第30条、第35条の3又は第36条(居室の採光面積に係る部分に限る。以下この項において同じ。)に係る部分に限る。)の規定は、第3条第2項の規定により第28条第1項若しくは第3項、第29条、第30条、第35条、第35条の3又は第36条の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合について準用する。この場合において、第86条の7第2項及び第3項中「増築等」とあるのは「用途の変更」と、「第3条第3項第三号及び第四号」とあるのは「第87条第3項」と読み替えるものとする。

法87条各項の内容を要約すると以下のとおり。

法第87条
第1項 一号建築物への用途変更に対する確認申請手続き関係規定の準用
    ※法6条1項の準用により建築基準関係規定への適合義務も生じる
第2項 用途地域に係る制限の準用
第3項 既存不適格の用途変更に対する遡及適用(建築物全体)
第4項 既存不適格の用途変更に対する遡及適用(独立部分等のみ)

「確認申請の要否(法6条の準用)」と「既存不適格かどうか」の2つのパラメータで遡及される規定と基準時が変わるため、非常に複雑です。

このとき大大大前提条件として意識しておくべきなのは、「用途変更をすること」と「工事をすること」は切り離して遡及関係法令をチェックすべきということ。用途変更は法87条に、工事は法3条に遡及適用について定められています。

①用途変更をする場合:法87条で準用規定をチェック
 ⇒用途変更に対しては原則不遡及だけど、一部遡及規定あり。
②工事”も”する場合:法3条で準用規定をチェック
 ⇒増築、改築、移転、大規模の修繕・模様替に対しては原則全遡及だけど、一部緩和規定あり。

法87条を読むときは「工事するかどうか別にして…」という前置きで読むと理解がしやすいですね。

そもそも既存不適格⇒遡及とは

遡及とは「遡って、過去の事まで効力を及ぼすこと」。

建築基準法は、建築時に適法であった建築物がその後の法改正等で不適合状態になってしまった場合でも、工事や用途変更をしない限りそのままの状態であることを許しています。(法3条2項)

この状態のことを「既存不適格」と呼びます。法令で定義される言葉ではないため、ちゃんとした文書では「法第3条第2項の規定により第何条の適用を受けない」と記述されます。

よって、古い既存建築物は基本的に「法適合部分」と「既存不適格部分」の2つで構成されることになるのですが、用途変更(法87条)や増改築・大規模修繕など(法3条)をするタイミングで既存不適格(=不適合でも許されている部分)が解除されるのです。

この既存不適格が解除されることを遡及と呼んでいます。

第1項(確認申請が必要な用途変更)

さて、法87条1項では「建築物の用途を変更して第6条第1項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(類似の用途相互間におけるものを除く。)に確認申請が必要であると定められました。

法6条1項の特殊建築物とは「別表第一(い)欄の用途に使用する床面積が200㎡を超えるもの」です。例えば、延床面積2,500㎡の事務所ビルの1階部分201㎡をカフェに用途変更する場合にも法87条1項が適用されます。

では、2,000㎡の店舗ビルのうち120㎡をクリニックに用途変更する場合に確認申請は必要でしょうか…?建築物全体を見れば一号ですが、用途変更部分は200㎡以下です。

法87条1項に規定する「一号建築物」の読み方は複雑です。詳しいことは↓の記事をご参照ください。

いつの建築基準法を適用するのか

準用する法6条1項には「~その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて~確認を受けなければならない」とあるため、もちろん確認申請に添付する設計図書は建築基準に適合したものでなければなりません。(法への適合義務が生じる)

このとき、”いつ”の基準法が適用されるのかが問題になるのです。が、結論としては「新築(又は最後にした)工事に着手したときの建築基準法」であり、用途変更をする時(現行)の建築基準法ではありません。なぜなら、法3条により既存建築物は工事をしない限り建築当時の法が適用され続けるから。

とはいえ、法87条2項&3項&4項による遡及適用もあるため、普通に現行法に適合させなければならない規定も多くあります。(後述します。)

用途変更に係る遡及は「新築時or現行」の基準が入り乱れるため複雑です。実務的には、基本は現行法でチェックをして、どうしてもという場合に基準時の法へ遡るのが良いでしょう。

もちろん、増築等を伴う用途変更の場合には、法3条により現行法への適合が求められます。

ただし書き「類似の用途」とは

施行令137条の18で指定する「類似の用途」内の用途変更であれば、確認申請は不要(法6条などが準用されない)です。内容的には条文のまんまです。

施行令第137条の18(建築物の用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主事の確認等を要しない類似の用途)
 法第87条第1項の規定により政令で指定する類似の用途は、当該建築物が次の各号のいずれかに掲げる用途である場合において、それぞれ当該各号に掲げる他の用途とする。ただし、第三号若しくは第六号に掲げる用途に供する建築物が第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域若しくは田園住居地域内にある場合、第七号に掲げる用途に供する建築物が第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域若しくは工業専用地域内にある場合又は第九号に掲げる用途に供する建築物が準住居地域若しくは近隣商業地域内にある場合については、この限りでない。
 劇場、映画館、演芸場
 公会堂、集会場
 診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
 ホテル、旅館
 下宿、寄宿舎
 博物館、美術館、図書館
 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
 百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
 キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
 待合、料理店
十一 映画スタジオ、テレビスタジオ

法87条3項二号及び三号でいう「類似の用途」とは別のものですので、注意してください。

第2項(用途地域に係る制限)

法87条1項は一号建築物(200㎡を超える特殊建築物)に適用されるものでしたが、第2項の用途地域に係る制限はそれ以外の建築物にも適用されます。

法第87条第2項
 建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては、第48条第1項から第14項まで、第51条、第60条の2第3項及び第68条の3第7項の規定並びに第39条第2項、第40条、第43条第3項、第43条の2、第49条から第50条まで、第60条の2の2第4項、第60条の3第3項、第68条の2第1項及び第5項並びに第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定を準用する。

法第48条は「~”建築”してはならない」という”建築行為”を禁止する規定であるため、1項で法6条を準用したところで法48条の用途規制がかからないことを補完するための規定です。この2項の存在により、既存建築物を用途変更して法48条などの用途規制に適合しないものにすることはできません。

ちなみに、原動機の出力で規制されている地域において、その出力を増やすことも用途変更に含まれると解されています。つまり、作業場を建築した後に原動機を増設する行為は法87条2項により禁止されることになります。

第3項(既存不適格への遡及規定)

第3項は、既存不適格建築物が用途変更により遡及適用される条文を列記したものです。

法第87条第3項
 第3条第2項の規定により第27条、第28条第1項若しくは第3項、第29条、第30条、第35条から第35条の3まで、第36条中第28条第1項若しくは第35条に関する部分、第48条第1項から第14項まで若しくは第51条の規定又は第39条第2項、第40条、第43条第3項、第43条の2、第49条から第50条まで、第68条の2第1項若しくは第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定(次条第1項において「第27条等の規定」という。)の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。
 増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合
 当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合
 第48条第1項から第14項までの規定に関しては、用途の変更が政令で定める範囲内である場合

以下に遡及適用される規定をまとめます。この遡及適用は用途変更した部分だけはなく、建築物全体に及びます。法20条(構造関係規定)の準用が無いだけマシで、あとはまあまあ厳しいですが次の第4項で若干の緩和があります。

法27条(耐火建築物・準耐火建築物)
法28条1項,3項(居室の採光,火気使用室等の換気)
法29条(地階における住宅等の居室)
法30条(住戸の遮音界壁)
法35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
法35条の2(特殊建築物等の内装)
法35条の3(無窓居室等の主要構造部)
法36条中法28条1項,法35条に関する部分
法48条1項から13項(用途地域の制限)
法51条(卸売市場など)
法39条の2などに基づく条例の規定

確認申請が不要(法6条が準用されない)の範囲でも、既存不適格建築物の用途変更をすれば本規定は適用されますが、第三者による法チェックが無いので逆に不安を覚える設計者もいるかもしれません。

3階建て200㎡未満の建築物については、法27条による耐火要求に緩和があります。

令和元年の法改正までは、物販店、飲食店、簡易宿所やシェアハウスなどの別表第一(い)欄の特殊建築物の用途を3階以上の階に設ける場合には、耐火建築物等にする必要がありました(これがネックでした)が、法改正によって3階建て200㎡未満の建築物はこれらの用途を3階に設けても、原則として耐火建築物等にしなくても良くなりました。

緩和を受けるためには、共同住宅や簡易宿所などの就寝用途に対しては必要な措置として「住宅用の火災報知器」と「階段を区画すること」の二点が必要です。(物販店や飲食店等の就寝用途以外の用途については「在館者が迅速に避難できる措置」は特に不要。)

なお、階段の区画については、防火区画の様な特別な区画は不要で、天井までの石膏ボードの壁と木製建具(いわゆる戸)での区画でOKです。

これで、第一種・第二種低層住居専用地域などの住居系地域に建てられた3階建て以下のその他建築物(耐火要求の無かった建築物)の用途変更が容易になりました。

第3項の適用除外(遡及されないケース)とは

第3項各号に該当する場合は遡及について適用除外されます。少し意味が分かりにくいので、以下に解説します。

第一号:増改築や大規模の修繕等をする場合の遡及については、法3条(法86条の7)で規定されているので便宜上除いたものです。

第二号:類似の用途への用途変更で大規模ではない修繕等までの工事であれば遡及適用されない(大規模であればそもそも法3条が適用される)、という意味です。この場合の類似の用途とは施行令137条の19第1項に規定されています。

第三号:用途地域の制限にフォーカスした遡及適用されない範囲です。類似の用途への用途変更に限ったもので施行令137条の19第2項に規定されています。第2項による遡及適用の例外規定となっています。

第4項(独立部分のみへの遡及)

準用する条文は2つだけです。どちらも既存不適格に関する緩和規定です。
法86条の7第2項:複数独立部分がある場合の遡及緩和
法86条の7第3項:増築部分のみへの現行法適用

法第87条第4項
 第86条の7第2項(第35条に係る部分に限る。)及び第86条の7第3項(第28条第1項若しくは第3項、第29条、第30条、第35条の3又は第36条(居室の採光面積に係る部分に限る。以下この項において同じ。)に係る部分に限る。)の規定は、第3条第2項の規定により第28条第1項若しくは第3項、第29条、第30条、第35条、第35条の3又は第36条の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合について準用する。この場合において、第86条の7第2項及び第3項中「増築等」とあるのは「用途の変更」と、「第3条第3項第三号及び第四号」とあるのは「第87条第3項」と読み替えるものとする。

法86条の7第2項について適用されるのは法35条のみ。廊下・階段・出入口、排煙規定、非常用照明に関する規定の遡及範囲が「独立部分」のみで良いとする緩和規定です。

法86条の7第3項について適用されるのは第28条1項と3項(居室の採光,火気使用室等の換気)、法29条(地階における住宅等の居室)、法30条(住戸の遮音界壁)、法35条の3(無窓居室等の主要構造部)。これらの規定の遡及範囲は増築部分だけで良いとする緩和規定です。

難しい条文が入り乱れますが…。要するに、第3項により建築物全体が遡及適用されてしまうのは厳しいので、特定の規定のみについては独立部分や増築部分のみの遡及にしてあげようという緩和の規定です。

既存ストックの活用ニーズが高まる昨今、多くのプロジェクトが動いていますが、用途変更による既存不適格への遡及がネックになることも多くあると思います。「プロが読み解く 増改築の法規入門」で実例から法規の勘所を押さえておきたいところです。

まとめ

法87条を読むには、既存不適格への遡及に関する規定を理解していないと難しいところがあります。要点を箇条書きにしてまとめておきます。

  • 法48条などの用途地域の規制に関しては、確認申請の要否に関わらず現行の規定が適用される。
  • 類似の用途(令138条の18第2項)の範囲内での用途変更あれば法48条の既存不適格を継続できる。
  • 増築等の工事をしない、かつ確認申請の必要ない用途変更であれば、建築基準関係規定への適合は法8条の努力義務である。
  • 確認申請が必要な用途変更であれば、手続き規定の準用だけでなく建築基準関係規定への適合義務が生じる。
  • 用途変更により準用される建築基準関係規定への適用の原則は、建築された時点の基準であり、用途変更する時点の基準ではない。(用途変更≠工事ではないから法3条3項による既存不適格への遡及が無い)
  • 法27条(耐火建築物・準耐火建築物)、法28条1項と3項(居室の採光,火気使用室等の換気)、法29条(地階における住宅等の居室)、法30条(住戸の遮音界壁)、法35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)、法35条の2(特殊建築物等の内装)、法35条の3(無窓居室等の主要構造部)については、普通に用途変更する時点の基準が適用される。(法87条3項)
  • 3項の適用にあたっては、独立部分の緩和や用途変更しないところの緩和などが適用できる。(法87条4項)
  • 非居室⇒居室に用途変更するような、新たな規定(居室の天井高さや24時間換気)が適用になる場合は、現行の規定への適合が必要である。(法3条は既存不適格が緩和されるのであって、新たな適用規定は既存不適格ではないため、現行法を不適用とする根拠がない。けど、ここまで突っ込んだ判断をするには特定行政庁へ相談するのがベスト。)
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