用語と手続き

基礎が無くても建築物です!法律による建築物の定義とは?

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この記事のポイント
  • 建築基準法における「建築物」の定義とは
  • 「土地に定着する」の意味とは
  • 「開閉屋根」の構造方法ごとの取扱い
  • 小規模な倉庫」「ビニールハウス」「畜舎」の取扱い

建築基準法において「建築物」に該当するかどうかは、最も重要です。なぜなら、「建築物」でないなら建築基準法の規制自体が適用されないから。

では、建築基準法は、何を以て「建築物」を定義しているのでしょうか。基本的に、「簡単に動かせなくて、人が入れるもの」はほとんど「建築物」です。基礎の有無も関係ありません。

でも大人の事情で、建築基準法の規制を回避したいこと、ありますよね。もしものときに必要な知識です。

根拠とともに整理していきましょう。

まずは建築基準法 第2条 第1項 第1号を確認

建築基準法 第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)これに附属する門若しくは塀観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨(こ)線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

(以下略)

条文で、大きくは5つに分けられて定義されました。表にしてみます。

 土地に定着するもので…例えば…
屋根+柱 or 屋根+壁(これに類するもの含む)普通の建物や歩廊、カーポート
①に付属する門と塀①に付属のブロック塀、フェンス
観覧のための工作物野球場、陸上競技場
地下、高架内に設ける事務所、店舗、倉庫など地下街、ガード下の施設
①~④に設ける建築設備電気 ガス 給排水 消火 EV 避雷針…

日本語の意味は分かりますが、実務を進めるにはまだまだ疑問点が残ります。例えば…

  • 基礎が無ければ、「土地に定着していない」と言える?
  • タイヤが付いていれば「土地に定着していない」と言える?
  • 車検を取ってないトレーラーハウスは「土地に定着してない」と言える?
  • 係留船は「土地に定着していない」と言える?
  • 屋根が取り外し可能ならば、「屋根」とは言わないのでは?
  • さら地に塀だけを築造するのであれば「付属」ではない?
  • 人が入れない規模であれば「建築物」ではない?
  • 人が入らない用途であれば「建築物」ではない?

古来建築士たちは、屁理屈を武器に「これは建築物ではない」という脱法ルートを歩いては地盤を固めてきたので、近年では上記のような疑問点に対する統一的にな取扱いがまとまってきたように思います。

ひとつずつ整理しましょう。

「土地に定着する」とは?

法2条に定める建築物はすべて「土地に定着する工作物のうち」という枕詞がつきます。よって逆説的に、土地に定着しなければ建築物ではありません。

結論としては、「土地に定着」=『随時かつ任意に移動できるとは認められないもの』です。

基礎が無くても「土地に定着」と判断する

まず理解してほしいのは、「基礎がなければ、建築物ではない」は誤りです!

コンテナを地面に置くだけ、既製品倉庫をコンクリートブロックに乗せるだけ、防災倉庫・ゴミ捨て場を土間に設置するだけ、これらのものは随時かつ任意に動かすことができない以上「土地に定着」です。

平成16年の技術的助言が発出されるまでは、特定行政庁によっては「基礎がなければ、土地に定着してないため建築物ではない」と判断していたところもあるようで、そのような誤解が生じています。

現在は、屋根と柱・壁で構成されていて、随時かつ任意に動かすことができないものは「建築物」です。反論の余地なし。

※参考:国土交通省建築指導課長通知(平成16年国住指発第2174号)

建築:コンテナを利用した建築物の取扱いについて - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

タイヤ付きの工作物は使い方による

ジャバラで可動式のテントはキャスターによる移動が前提で作られているため確認申請が不要!として販売されています。これは、「建築物として取り扱う膜構造の範囲について、軽微なテント工作物以外は、規模、利用形態、開放形式を問わず建築物として取り扱う。」とされているから。

軽微なテント工作物とは以下のとおり。使用実態がこれを逸脱すると建築物です。

  • テント製の巻き上げ、軒出し(オーニングなど)
  • キャンプ用テント、運動会用テント等の一時的な使用を目的としたもの
  • 移動可能な温室、キャスター付きテント(固定装置を伴うものを除く)
  • 移動可能で、かつ開放性が高く、居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列・保管その他の屋内的用途に使用することを目的としないもの

※参考: 昭和38年3月28日住指発28号「法第2条第1項の建築物の解釈」

また、テント以外の「タイヤを利用した工作物」について、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」では、「給排水などの設備が簡易な着脱式でないもの」で「随時かつ任意に移動できるものとは認められないもの」は建築物として扱うものとしています。

それに加えて、キャスターやタイヤの有無がどうこうよりも、使用実態によっては特定行政庁が建築物であると判断する余地があります。

確認申請時はよほどの疑義がない限り設計図書が正ですから、「可動式テント」である旨記載されていれば「軽微なテント工作物」で通りますが、設置後の実際の使用実態が倉庫や作業場として常に使用されていたりすると、建築物として指摘される可能性は十分にあります。

このあたりの判断は、法律に明文化されていない以上、特定行政庁ごとの取扱いを逐一確認していく必要があります。

係留船は「土地に定着」している

「土地に定着する」状態とは、陸上だけでなく水面や海底に定常的に桟橋や鎖等で定着された状態を含むものであるとの判断が確立しています。(通達参照)

係留船についても、定常的に桟橋や鎖で定着されており、その使用実態がホテルや集会場など通常の建築物の用途に供するものは建築基準法の適用を受けます。

※参考1:通達 平成元年1月19日 住指発5号
※参考2:通達 平成10年3月31日 住指発168号

係留船の確認申請を出すことは、ほとんど無いでしょうが、豆知識として。

トレーラーハウスも取扱いが確立してきた

キャンピングカーやトレーラーハウスについては、平成25年日本建築行政会議の中の「車両を利用した工作物」に書かれている設置方法に準拠します。「建築物」に該当しない条件は以下のとおり。

  • 随時かつ任意に移動できる状態で設置すること。
  • 土地側のライフラインの接続方法が工具を使用しないで着脱できること。
  • 適法に公道を移動できる自動車であること。

車両を利用した工作物については、「随時かつ任意に移動できる」ことがより具体化されていますね。

「適法に公道を移動できる」とは道路運送車両法で定める車両(車検の取得)であることと、一定の規模を超えるサイズのものは基準緩和認定や特殊車両通行許可の取得が必要です。

屋根が脱着・可動式の場合は?

法2条による建築物の定義に「屋根+柱、壁(これに類する構造)」とあるので、逆説的に「屋根さえ無ければ建築物ではない」という理論になります。でも、可動式や脱着式の場合はどうでしょう。

開閉式屋根の取扱い

建築基準法上、疑義のあるものとして次に掲げるものが代表的ですが、どちらも結論から言うと使用実態により特定行政庁が判断する」となります。

①フレームにシート状のテントを張るタイプの上屋

取扱例1 建築物に該当する。シートが容易に取り外せるものではなく、規模が大きいため37年住指発86号通達には反しない。

取扱例2  建築物ではない、又は仮設として取扱う。なぜなら、シートは季節ごとに取り外すため常設とは言えないから。(プールテント)

②スライド開閉機能タイプの上屋

取扱例1 建築物である。スライド開閉式部分は開口部ではなく、屋根そのものである。(屋根の開口部という概念は基準法上ない。)

取扱例2  開口部とみなして、恒久建築物として取扱う。

「建築物かどうか」の次に床面積の取扱いなどについても、特庁ごとに確認した方が良いですが、基本的には不利側で検討すれば間違いはないでしょう。何にせよ、使用実態がどうかを説明するなり、図書に明記する必要は出てきます。

明らかな脱法行為でもまかり通る?

屋根が無ければ、建築物ではありません。よって、以下の脱法行為が可能となります。

増築工事で、敷地内通路として既設歩廊(建築物)をくぐるのはNGであるため、完了検査時のみ屋根を取り外すことで敷地内通路を確保し、完了検査後屋根を再度取り付けた。

新築工事で、既製品カーポートの屋根を取り付けずに建築物ではないと主張したが、完了検査後に屋根を取り付けた。

当然、何かの折に特定行政庁に発覚すると、12条5項報告を求められたり、是正指示を受けたりしますので、安易にやることではありません。

建築物に「付属する」門・塀とは

こちらも、逆説的に「建築物に付属しない」場合、建築物ではありません。

単独塀について

通報としてよくあるのが、「2項道路のセットバックライン内にCB塀を積んでいる!」というもの。しかし、他の建築物に付属するものでなければ、建築基準法上の「建築物」ではありませんから、当然法42条2項の規定も適用されません。

上屋の無い駐車場の塀やフェンスは2項道路も関係なければ、構造的にも基準法の規制を受けません。が、安全はしっかりと確保しましょう。

また、上記のような塀を更地に築造した“後”に、敷地内に建築物を建築すると、自動的に塀も建築物になるため、道路後退するために移設or解体する必要があるため注意が必要です。

「付属する」とは

「付属する」の原則的な意味としては、「同一敷地内にある」として差し支えないです。

だたし、そのことを逆手にとり、セットバック違反の既存フェンスを敷地分割により外に追い出して、「単独フェンスなので、建築物ではないです。」といった理論を展開する方がいます。

そういった明らかな脱法行為については、使用実態を鑑みて「付属する」と特庁が判断します。敷地分割は自由ですが、行政指導がある可能性は十分にあります。

建築物に設ける「建築設備」とは

建築設備そのものの定義は法2条3号です。

建築基準法 第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
三 建築設備 建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。

(以下略)

法文には「等」や「これに類する」という言葉がないため、挙げられたものだけが建築設備です。そして、建築物に設けられる建築設備は「建築物」です。

小規模な倉庫について

法2条では、貯蔵槽その他これらに類する施設」は、建築物ではないとしています。

「これらに類する」に当たる施設としてよく出てくるのが「小規模な倉庫」について。 国住指第4544号(平成27年2月27日)に記載されているものの、「人が立ち入らない」具体的なサイズについては明文化されていません。

具体的なサイズ等については「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例2017年度版」に記載されていて、条件に合えば法2条1項一号の「これらに類する」に該当するとして建築物ではありません。

土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含)のうち、奥行きが1m以内のもの又は高さが1.4m以下のものは、建築物に該当しない。

建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例2017年度版 より

ビニールハウスや畜舎について

畜産業・農業関係の建築物も取扱いが定まってきました。

ビニールハウス

基本的に、農地において栽培のためだけに使用するビニールハウスは建築物ではありません。ただし、以下の場合には建築物と見なされる場合があるので注意が必要です。

  • トラクター等の農機具の保管場所としている
  • 栽培作業者以外の不特定多数の者が利用する(観光農園)
  • 被覆材を塩ビ等のフィルム以外としている

畜舎

「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律」が令和3年5月19日に公布されました。

基準の適用を希望する人が「畜舎建築利用計画」を作成し、知事の認定を受けた場合に、建築基準法の適用が除外されるものです。

厳密には、建築物ですが、「建築物ではない」と同等の扱いですので、紹介しました。

詳しくは農林水産省のホームページをご確認ください。

畜舎等の建築等について:農林水産省

まとめ

「建築物」かどうかは、建築基準法が適用されるかどうかの分かれ道になるため、めちゃくちゃ重要です。実務では、様々な理論(屁理屈)によって脱法するための必須知識となってしまっています。

  • 建築物の定義は法2条1項1号に定義されている
  • 「土地に定着する」の判断に基礎の有無は関係ない
  • テント、ビニールハウス、畜舎、トレーラーハウスなど、分野ごとに細かな取り決めがある
  • 脱着、開閉屋根ついては必ず特庁に相談すること
  • さら地のフェンスや塀は「建築物」ではない。
  • 「小規模な倉庫」の判断基準は奥行き1.0m、高さ1.4mが目安

建築士ならば、基準法上の「建築物」でなくても、安全や周辺環境への配慮は当然のことです。

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