お疲れ様です、一級建築士のくるみです。(twitterはこちら)
今回は、建築確認申請の特例についてまとめます。
普段住宅を小規模建築物を設計しない方には、あまり馴染みの無い規定ですが…。世の中の確認申請の7割くらいは4号建築物にあたり、そのほとんどが確認申請の特例を受けているそうです。
実は、私もあまり使ったことがない規定なんですが。一緒に勉強or復習するつもりでお読みいただければ幸いです。
まずは、△号建築物→○号特例を理解
まず特例の法文を読むためのルートを整理しておきましょう。大きくは3つの条文を移動します。各条文に「号」があるので難解になっていますので、その辺の集中力を高めて読むと理解が早いです。
① 法6条 確認申請が必要な建築物の条件はコレです(△号建築物)
② 法6条の4 その中でもこんな建築物は審査項目を減らします
③ 令10条 減らす項目は具体的にコレです(○号特例)
では順に説明していきます。
△号建築物とは
まず、△号建築物とは、法6条1項で規定されている「建築確認が必要な建築物の区分」です。
確認申請が必要な建築物について厳密に説明すると「法文のとおり」となってしまいますので、一戸建ての住宅を、ざっくりとしたイメージでとらえるなら以下の感じでしょうか。
法6条1項の
【1号建築物】(特殊建築物なので、一戸建ての住宅はありえない)
【2号建築物】木造3階建の戸建住宅 ⇒狭小地の住宅に多い
【3号建築物】鉄骨造2階建の戸建住宅 ⇒鉄骨系ハウスメーカー
【4号建築物】木造平屋or2階建の一般的な戸建住宅 ⇒ほとんどコレ
住宅の世界で圧倒的に見かけるのが木造2階建て(4号建築物)で、次いで鉄骨2階建て(3号建築物)です。3号建築物はダイワハウスやセキスイハイム、ベーベルハウスといった鉄骨系ハウスメーカーが代表的です。
○号特例…の前に法6条の4を経由する
さて次に、○号特例とは「ある条件を満たす建築物については確認申請の審査項目を少なくしますよ」という取り扱いのことで、施行令10条の1~4号のどれに該当するかで、そのように呼んでいます。
ただし、施行令10条の各号に辿り着くまでに、法6条の4を経由します。
第6条の4
第1号若しくは第2号に掲げる建築物の建築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替又は第3号に掲げる建築物の建築に対する第6条及び第6条の2の規定の適用については、第6条第1項中「政令で定めるものをいう。以下同じ」とあるのは、「政令で定めるものをいい、建築基準法令の規定のうち政令で定める規定を除く。以下この条及び次条において同じ」とする。
一 第68条の10第1項の認定を受けた型式(次号において「認定型式」という。)に適合する建築材料を用いる建築物
二 認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物
三 第6条第1項第4号に掲げる建築物で建築士の設計に係るもの
一号については現時点では規定を定める政令が制定されていません。つまり、現状の運用では2号と3号だけ気にすればOKです。
二号は、いわゆるプレハブ住宅を想定した規定で、あらかじめ国土交通大臣の型式適合認定を受けている場合が該当します。大手の鉄骨系ハウスメーカーは基本的に大臣認定を受けているので、建築確認申請が簡略化できるというわけです。(あとで出ますが、施行令10条の1号と2号に該当します。)
余談ですが、型式認定そのものの設計でないと特例の対象となりませんから、注文住宅で地下に車庫があったり、大邸宅だったりすると構造の仕様や面積の制限が認定の範囲を出てしまい、確認申請の特例を受けられなくなったりすることがあるようですので、融通の利かなさは注意すべき点かもしれません。
三号は、「4号建築物で建築士が設計したもの」と分かりやすい条件となっています。(あとで出ますが、施行令10条の3号と4号に該当します。)
○号特例とは
具体的にどんな条文が審査対象外になるかということは、施行令10条を参照します。ただ、施行令10条は審査対象外規定が羅列されいているだけですので、ダラダラと読み込む必要はないかと思いますが、、一応引用しておきます。
建築基準法施行令第10条(建築物の建築に関する確認の特例)
法第6条の4第1項の規定により読み替えて適用される法第6条第1項(中略)の政令で定める規定は、次の各号(中略)に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める規定とする。
一 法第6条の4第1項第二号に掲げる建築物のうち、その認定型式に適合する建築物の部分が第136条の2の11第1号に掲げるものであるもの 同号に掲げる規定
二 法第6条の4第1項第二号に掲げる建築物のうち、その認定型式に適合する建築物の部分が第136条の2の11第2号の表の建築物の部分の欄の各項に掲げるものであるもの 同表の一連の規定の欄の当該各項に掲げる規定(これらの規定中建築物の部分の構造に係る部分が当該認定型式に適合する建築物の部分に適用される場合に限る。)
三 法第6条の4第1項第三号に掲げる建築物のうち防火地域及び準防火地域以外の区域内における一戸建ての住宅(住宅の用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が、延べ面積の1/2以上であるもの又は50m2を超えるものを除く。)次に定める規定
イ 法第20条(第4号イに係る部分に限る。)、法第21条から法第25条まで、法第27条、法第28条、法第29条、法第31条第1項、法第32条、法第35条から法第35条の3まで及び法第37条の規定
ロ 次章(第1節の3、第32条及び第35条を除く。)、第3章(第8節を除き、第80条の2にあつては国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定る基準に係る部分に限る。)、第4章から第5章の2まで、第5章の4(第2節を除く。)及び第144条の3の規定
ハ 法第39条から法第41条までの規定に基づく条例の規定のうち特定行政庁が法第6条の3第2項の規定の趣旨により規則で定める規定
四 法第6条の4第1項第三号に掲げる建築物のうち前号の一戸建ての住宅以外の建築物 次に定める規定
イ 法第20条(第4号イに係る部分に限る。)、法第21条、法第28条第1項及び第2項、法第29条、法第30条、法第31条第1項、法第32条、法第33条並びに法第37条の規定
ロ 次章(第20条の3、第1節の3、第32条及び第35条を除く。)、第3章(第8節を除き、第80条の2にあつては国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定する基準に係る部分に限る。)、第119条、第5章の4(第129条の2の5第1項第6号及び第7号並びに第2節を除く。)及び第144条の3の規定
ハ 法第39条から法第41条までの規定に基づく条例の規定のうち特定行政庁が法第6条の3第2項の規定の趣旨により規則で定める規定
例えば「法6条1項でいう4号建築物」で、防火地域や準防火地域以外の区域に(建築士の設計で)建築する戸建住宅は、「三号特例」に該当します。ほとんどの戸建住宅はコレにあたるのではないでしょうか。
ちなみに、「四号特例」に該当するものとしては以下3パターンのみ。
①防火・準防火地域内にある
②防火・準防火地域外にあるが、一戸建て住宅ではない
③防火・準防火地域内にある併用住宅で、住宅以外の用途が延面積の1/2以上あるか50㎡を超える
①は、単純に敷地が防火関係の区域にあるかどうかですね。
②は、物置や車庫といった建築物が該当します。
③は、例えば設計事務所を併設する住宅で延面積が200㎡の場合、事務所部分(住宅以外の用途)が51㎡だと、50㎡を超えているので「四号特例」に該当します。延80㎡で事務所が41㎡だと、50㎡は超えていませんが、住宅以外の用途が1/2以上あるので、やはり「四号特例」です。
また、大手ハウスメーカー鉄骨2階建の「3号建築物」で型式認定を取得している場合は「一号特例」にあたります。3号建築物に該当してしまうと構造計算が必要になりますから、ハウスメーカーとしては大臣認定を受けてでも申請が簡略化できるようにしたいわけですね。
つまりハウスメーカー勤務やその協力事務所以外の方は、三or四号特例のみ気にしたら良いですね。
以上で、だいたい○号特例へのルートが整理できたと思います。一番最初に示した、汚いメモ書きが全てですね。
特例を使うメリットは?
施行令10条には法令がズラリと並べられていて分かりにくいですが、特例を受けることによる最大のメリットはやはり法20条(構造関係規定)でしょう。
また、意匠設計者に優しいのは法28条の採光検討や法35条の排煙無窓の検討でしょうか。特例を受けるにもかかわらず、計算式をわざわざ申請図面に書き込んで審査担当を困らせないようにしましょう。
くれぐれも注意してほしいのが、それらの規定について確認申請図書に法適合を明記する必要はありませんが、法適合していることは大前提だということ。
例えば、法35条のチェックを疎かにすると完成検査で無窓が発覚するだけでなく、施行令128条の敷地内通路が確保できていないことも芋づる式で発覚してしまう、というような最悪の事態が考えられます。
実務的にどのように法チェックするか
計画する住宅が何号特例にあたるか分かったら、実際にどのような特例を受けられるかを把握することで申請用図面に関してはどんどん簡素化して、ディテールに時間を割きたいところ。
まじめにやれば、施行令10条に示された各条をひとつひとつ確認していくことになりますが、審査機関や特定行政庁がチェックシートを作成してくれいていますので、それらを利用するのが良いかと思います。
例えば3号特例の場合、法28条や法20条は特例になり、確認申請に構造計算や採光検討は添付不要となるわけです。添付不要となるだけで、採光検討や構造計算は建築士が責任をもって行わなければなりません。
住宅を中心に仕事をしている設計事務所さんなんかは、この辺はもう覚えてしまってるのでしょうかね。
木造住宅の確認申請であれば、参考書が一冊あると心強いです。↓の参考書は木造2階建て住宅を事例に注意点などが分かりやすくまとめられておりオススメです。
まとめ
繰り返しますが、特例はあくまで「審査の対象外とする」という、確認申請の審査業務を簡素化・迅速化することを目的としたものですので、決して審査対象外とされた規定について法適合させてなくて良いわけではありません。
- ハウスメーカー勤務やその協力事務所以外の建築士は、三号or四号特例しか気にしなくて良い
- 防火・準防火地域外の2階建て戸建て住宅はほとんど三号特例が受けられる
- 特例の最大のメリットは法20条の審査項目除外
- 特例で審査項目除外だからと言って、法適合しなくて良いわけではない
理解してしまえば、再度条文を確認する必要もないかもしれませんが、プロであれば根拠条文は抑えておきたい項目でした。