用語と手続き

【用途変更の確認申請】200㎡以下でも確認申請必要かも…複数回の用途変更の注意点

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この記事のポイント
  1. そもそも建築物の用途変更で、確認申請が必要となる条件
  2. 用途変更面積が200㎡以下でも確認申請が必要なケースがある
  3. 区分所有のビルとそれ以外では取扱いが若干違う

「床面積200㎡を超える特殊建築物へ用途変更した場合、確認申請が必要になる。(法87条)」
という規定は皆さんよくご存じです。

そのうえで、以下のような相談がたまにあります。

既存の事務所ビルを一部(100㎡程度)を介護施設に用途変更したい。とりあえず200㎡を越えなければ確認申請が不要であることは分かるが、将来的に事業が拡大して残りの150㎡の部分をさらに介護施設として用途変更するかも知れない。その場合、合計で250㎡の用途変更をしたことになるが、確認申請は必要?

思わず、は?と言ってしまいそうですが、結論から書くと「今回工事ではとりあえず確認不要ですが、次回用途変更時には改めてご相談ください。」となります。

何とも釈然としない回答ですが、そうなってしまう理由は追って掘り下げます。

なお、「建築物の用途を変更して第6条1項1号の特殊建築物のいずれかとする場合」に確認申請が必要とされていますが(法87条1項)、法6条1項1号に規定する「200 ㎡を超えるもの」の運用解釈が特定行政庁ごとに異なり、それぞれ手続きの要否の判断が異なる状況にあることが原因です。

つまり、以下のパターンで皆悩むわけです。

  • 「用途変更部分の床面積」が200㎡を超える場合?
  • 「用途変更後、建築物全体の特殊建築物部分の床面積」が200㎡を超える場合?
  • 過去に用途変更した床面積を合算して200㎡を超える場合?

その答えをまとめます。

用途変更の確認申請要否は「変更部分の用途と面積」のみで判断

用途変更の取り扱いについては2016年3月に「用途変更の円滑化について(技術的助言)(平成28年3月31日国住指第4718号)」が発出されています。以下、東京都建築士事務所協会HPよりダウンロード可能です
https://www.taaf.or.jp/files/news/dl/623

技術的助言で明確にしていることは、次の通りです。
(法改正がありましたので、100㎡を200㎡で読み替えてます。)

要約①
特殊建築物の一部を特殊建築物の用途でないものに用途変更する時には確認不要

これは「変更部分」が事務所や住宅などであれば、とにかく確認不要ということですね。

なお先に書いておくと、用途変更における確認申請の要否は全て、「変更部分の用途と面積」のみで判断するので、この辺を意識すると理解しやすいと思います。(法6条1項1号の法文をそのまま読むと、用途変更以外の部分についても特建用途なら全て確認必要であるようにも解釈できますが、どうやらそうではないようです。)

要約②
特殊建築物の用途への変更で、その部分の床面積が200㎡を超える場合は確認必要

②を逆に言えば、「200㎡以下の用途変更」なら用途が何であれ確認不要と読み取れます。

ただし、「同一の者が200㎡以下の用途変更を繰り返し行う場合については、意図的に用途変更の手続きを回避しようとすること考えられるので、特に留意せよ」と書いてあり、前述した私の回答の根拠がここにあります。

つまり、冒頭の相談に対しては

(変更部分が200㎡以下なので)とりあえず確認は不要ですが、次回用途変更時に(手続き逃れなど、意図的に悪いことしていないかチェックさせて欲しいので)改めてご相談ください。

という回答になります。釈然としませんが、そういうことです。

要約③
区分所有建築物等で、異なる区分所有者等が200㎡以下の特殊建築物の用途への用途変更を別々に行う場合、その部分の合計が200㎡を超えた時点での用途変更の手続きは、特定行政庁が地域の実情に応じ必要と判断した場合に限り、その手続きを要する。

区分所有建築物は共同住宅をイメージすれば理解しやすいですね。②のただし書きに対して、「同一の者」ではない場合に配慮して③で明記しており、基本的には、別々の区分所有者がそれぞれ200㎡以下の用途変更をどれだけ行っても確認不要と読み取れます。

ただし、得意の「特定行政庁が地域の実情に応じ必要と判断した場合」に限り確認申請が必要になってきます。私見ですが、やはり上記した「意図的に悪いことしていないかチェックさせて欲しい」という真意がここにも見えますね。

画像1
いつも汚いメモ書きですみません…

用途変更に関する規定は思っているよりも複雑

用途変更により確認申請が必要かどうか、というトピックは確かに重要ですが、根拠条文である法87条には、一号建築物以外にも準用しなければならない規定や、既存不適格への遡及に関する規定など読みにくい規定がいくつかあります。

新しくない建築物にはたいてい既存不適格部分はありますから、用途変更する避けては通れない条文です。詳しくは下記のリンク先をご参照ください。

まとめ

長々と書きましたが、用途変更における確認申請の要否判断は以下のとおり理解しておけば難しいことはありません。

  • 「特殊建築物への用途変更部分」が200㎡を超える場合にのみ確認申請必要である。
  • ただし、同一棟で将来的に別の用途変更をする可能性がある場合は、悪いことをしていないかチェックするので個別に特定行政庁へ相談すること。

意図せず手続き違反になってしまったら、その後の増改築の際に12条5項報告を求められたりして、面白くありませんからね。事前相談は必ず行っておきましょう。

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