用語と手続き

行政代執行も?違反建築物に対する法的処置とは

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この記事のポイント
  1. 建築物の所有者に課される建築基準法上の責任
  2. 著しく保安上危険な建築物に対する建築基準法に基づく行政処分
  3. 空き家なら「空家法」による行政処分もある

近年、自然災害によって家屋が倒壊するショッキングな映像を目にすることが増えてきました。地震災害では、鉄骨造だけでなくRC造の公共建築物でも大きな損傷を受けている映像を見かけます。

あなたの身の周り、または実家の近くや通勤・通学路の沿道には、地震等で倒壊しそうな建物はないでしょうか。または、誰もメンテナンスしていない空き家はないでしょうか。

今回は、そのような建築物から家族、ひいては社会を守るために、建築基準法や関連法令でどのように対処していくか考えます。

建築物の所有者には法的(社会的)責任が常にのしかかる

建築基準法は建築物の構造等に関する最低限の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的としています。(法1条)

また、建築を行う場合には確認申請と完了検査により建築物の(建築時の)適法性を担保できる仕組みを定めています。(法6条ほか)

そして建築したあと。

「建築物の所有者は自分の建築物とその敷地を常時適法な状態に維持するよう努めなければならない」とし、オーナーに対して建築物の安全性を維持する責任を課しています。(法第8条)

同時に、建築物の所有者(又は管理者)において、建築士等により建築物の維持保全状況の調査・検査を定期的に受け、その結果を特定行政庁に報告するよう義務付けています。(法12条)

建築基準法により、建築物の所有者には建築から解体までの間、最低でも適法に保つためにメンテナンスを続ける義務が課されています。そう、建築基準法に登場する主語の多くは、建築士ではなく建築物の所有者なのです。

完了検査さえ受けてしまえば、後は自由でしょ。個人の財産なんだし。

どう頑張っても他人に危害が及ぶ可能性を払拭できないのが建築物です。たとえ個人の住宅でも、適法を維持しないと万が一の際に所有者は法的(社会的)責任を問われます。

たとえば、法12条による定期報告や定期検査で、多く見かける是正事項は以下のとおり。建築の素人である建築物の所有者には、防火区画や避難規定は特に理解し難く、運用の都合上意図せず違法状態になっていることがしばしば見受けられます。

  • 外装タイルの全面打診検査等を行っていない
  • 常閉の防火扉を開きっぱなしで固定している
  • 避難階段に物品を放置している
  • 漏水による内装材(壁・天井のボード類)の汚損・損傷
  • 排煙窓が開かない(パッキンの固着、オペレーターの故障)
  • 非常用照明の電池切れ
  • 防火シャッターの危害防止装置未設置

これらの要是正事項があるまま特定行政庁へ報告を行うと、改善報告書等を求められます。最低限の適法状態を保つだけでもメンテナンスコストがかかります。

また、定期報告義務の無い一戸建ての住宅であっても、例えば屋根瓦の固定方法まで告示で定められているわけで、、コストを投じて建築物の適法性を維持するのは、建築士ではなく建築物の所有者自身なのです。

危険な建築物は個人の財産といえど行政処分される(建築基準法)

建築基準法では、その既存不適格建築物に対して、著しく保安上危険であるか、衛生上有害であると特定行政庁が認める場合には、建築物のオーナーに対して建築物の除却、修繕、使用禁止等の措置をとることを命ずることができるよう規定されています。(法10条)

しかし、これまで「著しく保安上危険」であることの基準が曖昧であったことに加え、やはり個人の資産に踏み込むわけですから、10条の実績は少なく行政としてもなかなか使いづらい法律であったと思われます。

そんな中、「建築基準法の一部を改正する法律」(令和元年6月 25 日施行)により法9条の4が創設され、技術的助言の中に「既存不適格建築物に係る指導・助言 ・ 勧告・ 是正命令制度に関するガイドライン」も更新されました。法第10条の適用事例も掲載されています。

※下記国交省HP内のリンクです。

建築:建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

法10条が「命令&代執行」というキツめの規定を定めるものであったことに対して、法9条の4は「助言&指導」というもう少し緩めの行政介入ができるようになったことで、活用事例が増えるのではないでしょうか。(ガイドライン内の法10条活用事例を見れば分かりますが、今までは本当にヤバイ建築物にしか活用できていないので…)

もし、あなたやあなたの大切な人やその資産が脅かされるような建築物が身の周りにあるとしたら、所管の特定行政庁へ相談するのも解決方法の一つかもしれません。道路や公園などの公共空間への被害が出そうな状況であれば、行政としては動きやすいはずです。

空き家なら「空き家法」による行政処分もある

建築基準法以外にも、危険な建築物に対する法的処置として「空き家法」があります。
今回の記事では、空き家法の制度としての概要を眺めてみます。

相続した実家が遠くて管理が出来ない。お金をかけるのももったいない。家さえ建っていれば固定資産税が安いままだし、とりあえず放置しておこう…。

そんなこんなで、地域で問題となる空き家が爆誕します。ひどい場合には管理者が不明になるといった場合も。当然、空き家といえども個人の所有物なので、勝手に入ったり、解体できません。

景観・衛生・防災・防犯の面で問題を起こす空き家が社会問題になりかけていた頃は、自治体が独自に空き家条例などにより対処していましたが、法的拘束力がないために対処方法に限界がありました。

そこで、平成27年5月26日に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。

この法律により「空き家」とは何かを法的に定義され、自治体が空き家に立入り調査を行い、所有者に適切な管理をするよう指導したり、活用を促進できるようになり、地域で問題となる空き家を「特定空き家」に指定して、立木伐採や住宅の除却などの助言・指導・勧告・命令をしたり、行政代執行もできるようになりました。

自治体によっては特定空き家の解体に係る補助金もあるため、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外などのペナルティと合わせて、アメとムチによる強めのインセンティブが働いています。

特定空き家の定義と、指定されることによる固定資産税等の税制の話は、行政のホームーページやその他サイトの方が詳しいので、本記事では割愛します。

報道発表資料:空家法施行から4年半、全国で空き家対策の取組が進む~空き家対策に取り組む市区町村の状況について~ - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

なお、空き家法を法的根拠として活用するには、建築物の位置する自治体が「空家等対策計画」を策定している必要があります。国交省によると、2019年10月1日時点で全市区町村の63%となる1,091市区町村において空家等対策計画が策定されているとのこと。

また、2019年10月1日時点で特定空家等の除却等に至った件数は7,552物件に及んでいて、指導中という空き家も多いだろうから、地域で問題となる空き家対策が進展していることがうかがえます。

まとめ

身の周りにある危険な建築物に対して、法的にどのような処分を下せるか。⇒どのようにして身を守るかをまとめました。

  1. 建築物は所有者により適法に保つ義務がある
  2. 著しく保安上危険な建築物は建築基準法10条に基づき行政処分される可能性がある
  3. 空き家なら「空き家法」により行政処分される可能性もある

建築物は建ってしまえば、その所有者に大きな責任がのしかかります。そして、建築士はその責任を果たすためにサポートする立場にあります。特に空き家法については知らない方も多いため、しっかりと勉強しておきましょう。

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