用語と手続き

擁壁の法律まとめ。確認申請と構造計算の概要(宅造法)

用語と手続き
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この記事のポイント
  • 建築基準法における擁壁の定義
  • 確認申請が必要となる擁壁の高さ
  • 擁壁の構造計算
  • 確認申請に必要な図書

一級建築士のくるみです。(twitterはこちら

今回は、建築基準法における「擁壁」の全貌が理解できるよう、まとめます。

近年、擁壁や崖にまつわる事故が多発しており、工作物(ひいてはそれを設計する技術者)に対する社会の目はかなり厳しく、CB塀取扱いの厳格化に加えがけ条例などの条例整備により、技術者としても生半可な知識では乗り切れなくなってきています。

「擁壁」の定義から、適用される規定とその周辺をおさらいしておきましょう。

「擁壁」の定義

建築基準法における、擁壁に関する規定は以下の条項がすべてです。

【擁壁に対する規制一般】
・法19条4項(敷地の安全に関する規定)
・法40条(がけ条例の根拠)

【擁壁の確認申請】
・法88条(準用工作物の規定) ⇒ 法6条(確認申請)
・施行令138条(擁壁が準用工作物となる高さ)
・施行令142条(擁壁の構造)

法は基本、条例が具体

基本の規定は、法19条4項です。

建築基準法第19条
(前略)
4 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

ただ、法は方針を定めたもので、実務を行うにはフワッとした規定ですよね。

そこで、法19条でいう「がけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合」や「安全上適当な措置」を具体的にするために、地方公共団体は法40条を根拠とした条例により「安全ながけ(擁壁含む)」について定めています。(通称:がけ条例

建築基準法第40条

地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模に因り、この章の規定又はこれに基く命令の規定のみによつては建築物の安全、防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。

 「がけ条例」は各地方公共団体(特定行政庁)が定めているため、建築計画を行う地域ごとに内容を確認する必要があります。が、どこも内容は似通っています。

具体的には、傾斜が30度を超える角度で、高さ2mを超える高低差がある場合に当該部分を「がけ」として、擁壁等の安全対策を講じるか、建築物をがけから一定距離とらせるなどの対応をさせるもの。(札幌市など、高さを3mで定めている特庁もあります。)

以下に千葉県の例を貼っておきます。

わが家を建てるための法律知識-がけについて

条例によって、法19条の規制を具体的にしていますね。

逆に、高さ2m未満の高低差ならそもそも「がけ」じゃないから、がけ条例によって具体的な規制が課されることは基本ないと考えてもよさそうですね。

既存擁壁の安全証明

さて、がけ条例による擁壁等の安全対策の具体的な仕様等については、以下の法令による許認可等に準拠している特庁が多いです。つまり、既存の擁壁に対しても以下の法令により築造されたものかどうかを調査することが必要です。

  • 都市計画法による開発許可
  • 宅地造成等規制法による許可
  • 建築基準法による工作物の確認申請

なお、都市計画法による過去の開発については、自治体の開発指導担当課で「開発登録簿」を閲覧できます。宅地造成等規制法についても同課で相談すればOKです。

古い開発登録簿だと既存の擁壁が開発工事の中で築造されたものかどうか分かりにくい場合がありますが、所管課に質問する形で白黒ハッキリさせてもらいましょう。

ひと昔前までは、既存の擁壁の安全性について建築士の判断に任せていた特庁が多いと思います。(配置図等へ、建築士の責任において「安全について確認済」など記載することで、がけ条例を免れていた。)

しかし、近年の崩落事故等を受けて特庁も取扱いを厳格化し、上記した法令等に適合していると証明できない擁壁に対しては建築確認などが下りない可能性がかなり高くなっています。

※開発許可や宅造法の許可による擁壁の詳細な仕様は、都道府県等がまとめている宅造・開発許可に関する技術マニュアル等で確認するのが早いです。(下記リンクは三重県の例)

三重県|開発許可:宅地等開発事業に関する技術マニュアル
三重県庁の公式ホームページです。報道発表資料や更新情報、県政スケジュールなど県民の皆さんにお知らせしたい情報を掲載しています。

建築基準法による擁壁の具体的な仕様は施行令142条(擁壁の構造規定)に定められていますが、準用工作物の規定になるため、次のトピックで紹介します。

擁壁の確認申請

擁壁の”高さ”で確認申請の要否が決まります。

参照するのは以下の条項。

  1. 擁壁が準用工作物に該当すると、確認申請が必要です(法88条)
  2. 高さが2mを超える擁壁は、準用工作物に該当します(施行令138条)

よって、高さが2mを超える擁壁を築造する際は、確認申請が必要です。

建築基準法施行令第138条

煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で法第88条第1項の規定により政令で指定するものは、次に掲げるもの(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関するものその他他の法令の規定により法及びこれに基づく命令の規定による規制と同等の規制を受けるものとして国土交通大臣が指定するものを除く。)とする。
一〜四 (略)
五 高さが2mを超える擁壁

繰り返しますが、高さ2m以下の擁壁については、準用工作物ではないため建築基準法の具体的な規制を受けることはありません。この2mは、がけ条例とは違い、政令で決まっているので全国共通です。

新築・既存どちらに対しても、高さが2m以下の擁壁はがけ条例も適用されませんので建築基準法による具体的な規制は一切かかりません。フワッとした方針を定めた法19条への適合については、設計者のモラルと施主の予算に委ねられます。

「高さ」の取扱い

施行令138条の「高さ」について、単純に「地盤の高低差」とするか「土圧を受ける高さ」とするかは、特庁によって取扱いが異なるので、 計画を行う地域ごとに取扱いを確認する必要があります。

私たち技術者としては 「土圧を受ける高さ」 で考えるのが常識かと思いますが、施行令138条の「高さ」については単純に 「地盤の高低差」により判定するものとしている特庁もあります。

確認申請の要否に関わることですので、重要なチェックポイントです。

確認申請が不要なケース

法88条4項により、以下の法令等の許可により築造された擁壁については、確認申請が不要です。前述しましたが、がけ条例においても当該の擁壁については適用除外されることが多いです。

法令概要
宅地造成等規制法
 第8条第1項・第12条第1項
宅地造成工事規制区域内において工事許可を受けて築造する擁壁
都市計画法
 第29条第1項・第2項・第35条の2第1項
開発行為の許可を受けて築造する擁壁
津波防災地域づくり法
 第73条第1項・第78条第1項
特別警戒区域内における開発行為の許可を受けて築造する擁壁

これらの法令による許可を得るためには、建築基準法以上の審査と検査を経るわけですので、建築基準法によるチェックは不要というわけです。

建築基準法第88条
1~3(略)
4 第1項中第6条から第7条の5まで、第18条(第1項及び第25項を除く。)及び次条に係る部分は、宅地造成等規制法第8条第1項本文若しくは第12条第1項都市計画法第29条第1項若しくは第2項若しくは第35条の2第1項本文又は津波防災地域づくりに関する法律第73条第1項若しくは第78条第1項の規定による許可を受けなければならない場合の擁壁については、適用しない。

仕様規定

施行令142条により、(準用工作物である)擁壁はRC造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造としなければならず、コンクリートブロックは原則認められません。もしくは、宅地造成等規制法に基づく認定品を使用しなければなりません。

建築基準法施行令第142条

第138条第1項に規定する工作物のうち同項第五号に掲げる擁壁(以下この条において単に「擁壁」という。)に関する法第88条第1項において読み替えて準用する法第20条第1項の政令で定める技術的基準は、次に掲げる基準に適合する構造方法又はこれと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いることとする。
一 鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること。
二 石造の擁壁にあつては、コンクリートを用いて裏込めし、石と石とを十分に結合すること。
三 擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること。
四 次項において準用する規定(第7章の8(第136条の6を除く。)の規定を除く。)に適合する構造方法を用いること。
五 その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること。

2 擁壁については、第36条の3から第39条まで、第51条第1項、第62条、第71条第1項、第72条、第73条第1項、第74条、第75条、第79条、第80条(第51条第1項、第62条、第71条第1項、第72条、第74条及び第75条の準用に関する部分に限る。)、第80条の2及び第7章の8(第136条の6を除く。)の規定を準用する。

コンクロートブロックは、土圧や水圧に対する安全性が確保されているとはいえず、防水性がないため内部の鉄筋が劣化しやすいことからも長期間の使用には耐えられません。時間が経過すると膨れたり変形し、地震時に倒壊する原因となります。

2m以下の準用工作物ではないCB擁壁については、違法ではありませんが技術的には推奨されません。技術者のモラルが問われますよ。

また、その他の具体的な仕様規定は施行令142条2項において羅列されている条項です。

中でも、施行令第79条に規定される鉄筋のかぶり厚さは、プレキャスト材で宅造法による認定品を使用するか平成13年国交告第1372号による構造計算行うことで緩和されますので、詳細は告示を参照ください。(長くなるので省略!)

構造計算

構造計算の基準は、平成12年国交省告示第1449号 第3により、宅地造成等規制法施行令第7条に規定されます。宅造法施行令7条は、擁壁の破壊・転倒・滑動・沈下に対して構造計算を行い、安全性を確認する規定となっています。

具体的には「宅地造成等規制法施行令第7条」で検索して条文をご確認ください。どこに答えがあるか把握しておき、必要なときに参照するのがキホン!

なお、 平成12年国交省告示第1449号 第3 第一号第四号に該当する場合は構造計算の規定自体が適用除外されます。

【構造計算の規定が適用除外される擁壁】
一号 宅造法施行令6条1項 各号のがけ面に設ける擁壁
二号 斜面の安定計算(円弧すべり解析)を行って安全性が確かめられた崖
三号 宅造法施行令8条の練積擁壁(構造計算しなくてもよい5m以下の間知積)
四号 国土交通大臣認定の擁壁(宅造法施行令14条)

ただ、あくまで法律は最低限の基準を定めたものなので、技術的検討には、↓の参考書がおすすめです。建築屋さん向けに分かりやすくまとめられています。

必要な図書と明示事項

確認申請に必要な設計図書については、↓記事の「準用工作物の確認申請」の項をご参照ください。

まとめ

多くの特定行政庁では、擁壁の高さが2mを超えた瞬間にがけ条例が適用されると共に、準用工作物になるため、確認申請が必要になり、仕様規定や構造計算規定などの規制がかかってきます。

しかし、準用工作物としての擁壁にかかる規定をクリアすると、自動的にがけ条例もクリアできる場合が多くある一方で、同条例の中で特別なルールが課されることもあるため双方をチェックする必要があります。(摩擦係数の設定など)

注意すべきは、この高さ「2m」の取扱いが特庁ごとに異なるため、地域ごとに必ず確認する必要があります。

逆に、2m以下の擁壁には建築基準法や宅造法の具体的な規制がかかることはありません。強いて言えば、法19条の規定は高さに関わらず適用されると読めるため、モラルある技術者としてはコンクリートブロックによる擁壁は避けたいところです。

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