不動産集団規定

敷地調査前に知っといて欲しい”境界”を定義する3法令まとめ

不動産
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この記事のポイント
  • 筆界所有権界敷地境界はそれぞれ定義する法令も違えば、概念も違う
  • 建築士が設計する「敷地」はあくまで空間の実態に即した範囲設定である

普段会話の中で発せられる「境界」という言葉。場面や立場によって色々意味が変わってきます。
具体的には以下の境界について。

  • 不動産登記法の筆界→主に土地家屋調査士目線
  • 民法の所有権界(所有権)→主に土地所有者目線
  • 建築基準法の敷地境界→主に建築士目線

確認申請を通すだけなら筆界や所有権界は気にしなくてもいいかもしれませんが、建築士としてトラブルのない建築・事業計画を提案するためには、絶対に無視できません。

費用や工期などの理由で境界確定・測量をかけずに、設計を始めると敷地境界の設定で迷うことが色々ありますよね?筆界や所有権界という概念を押さえておくだけでも、トラブルを回避できるかもしれませんよ。

筆界と所有権界の関係

建築士にはあまり馴染みのない筆界&所有権界からおさらいしましょう。

筆界とは

筆界は「公法上の境界」と呼ばれています。平成17年の不動産登記法の改正により「筆界」という言葉が初めて明文化されました。

不動産登記法第123条第1号
筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう

土地が登記された時」というのは、明治6年~14年の地租改正事業の時、すなわち公図(※)が作成され地番というものが公示された時です。筆界はそれからずっと継承されている不動のものです。

おなじみの「公図」という言葉、実は俗称なんです。平成5年の不動産登記法の改正時に、「公図」は「地図に準ずる図面」という正式名称が付けられました。

地図に準ずる図面」は明治時代の村民たちによる低い測量技術のもとに作成された改祖図を元に作成されたものですから精度が低く、現代における境界確定の際に「かなり参考になる資料」くらいの位置づけです。

それに対して、不動産登記法第14条第1項に定義される「地図」とは、土地の区画や地番を正確に示し、現地の境界を復元できる精度の高いもののことです。この「地図」の作成には膨大な費用と労力が必要ですから、日本では現在進行形で絶賛「地図」を作成中なのです。

なんと、法務局備え付けの約半数が未だに「地図に準ずる図面」だそう。「地図」が配備されるまで「地図に準ずる図面」を暫定的に活用している状況なんですね。

※現実の会話の中で、多くの人は「地図」と「地図に準ずる図面」の2つを総じて「公図」と呼んでいます。逆に「地図」のことはあえて「14条地図」と呼んだりしています。

筆界は近隣同士の話し合いなどで勝手に変更できない・目に見えない・公的な境界線です。変更する必要が生じた場合は、法の範囲内で分筆・合筆登記をおこなって線形を整理していくことになります。

一筆ごとの面積は「地積」として登記簿に登記され、原則としてこれが固定資産税などの土地の評価額を算出する元となります。

筆界を現地で探す方法は、法務局備え付けの「地図・公図」「地積測量図」を以って、現地に埋設された境界杭や、塀の基礎の名残などの旧構造物を頼りにします。近年の地積測量図においては、座標が示されているため、現地に何もなくても復元が可能です。

現地調査のみで境界杭やプレートを発見しても境界確定されていると思わないほうが良いです。極論、誰かが勝手に設置した可能性もあるので。

所有権界とは

所有権界とは「私法上の境界」と呼ばれています。「ここからここまでが私の土地ですよ」という、民法による所有権の概念に内在し、隣接する土地所有者の共通認識、契約、口約束などによって動きます。

土地所有権の成立も地租改正事業の時と同じく明治初期とされており、「所有権界」もそれ以来ずっと継承され、人々の話し合いにより線形を変えながら現在に至っています。

「所有権界」を現地で探す方法は、土地所有者が現地に集まって「境界確認の立ち会い」を行う方法、または”目に見える”ブロック塀や境界標などの位置を検証する方法などが一般的です。

「筆界」と「所有権界」が不一致になる原因

さて、筆界と所有権界は少なくとも明治時代初期には一致していたでしょうが、現代では以下の理由により不一致となることがしばしばあります。

①筆界を表す公図や地積測量図に何らかの問題があって、所有権界の位置と一致しない場合。このとき、地図訂正を怠れば不一致のままとなります。

②隣接する土地所有者の話し合いにより所有権界に変更があり、それを現地に表すために新たな塀を設置したにも関わらず、分筆登記をしなかった場合。分筆登記をしなければ公図や地積測量図に反映されないので、当然筆界は存在しないが所有権界は存在するという状態になってしまいます。

極端に書くとこんなイメージ

所有権界は、隣地所有者との共通認識・話し合いの記憶・書面でのやり取りなどが根拠となるため、記憶の忘却、資料の紛失などにより時間の経過とともに曖昧になっていきます。

そして、より怖いのは、土地所有者自体が時の流れとともに移り変わっていくことです。所有権界変更時の当事者とは全く無縁で関係のない、後世の土地所有者が境界トラブルに巻き込まれてしまうことがあるためです。

単なる「筆界」と「所有権界」の不一致でも、その状態を放置すると、境界トラブルへと変貌していきます。

「筆界」と「所有権界」の不一致への対応

民法に由来し当事者の意思表示のみで変動する所有権界不動産登記法によって存在する不動の筆界。両者を一致させるために、どちらかをどちらかにアプローチしていく必要があります。不一致の原因を検証し、何が問題になっているかを法律的観点から整理していきます。

弁護士は民法上のトラブル解決として所有権界から整理し考え、最終的に合意できるかというアプローチをします。その一方で、土地家屋調査士は現地で筆界を探し、資料検証・現地測量することで問題を解決しようとするアプローチをします。(あくまでイメージの話。)

よく行われる具体的な最善解決ルートとしては以下の通りでしょう。

  1. 隣地土地所有者との境界確認の立会により所有権界を再確認し、
  2. その所有権界をそのまま筆界とみても「登記記録」や「地図・公図」「地積測量図」等その他の資料と矛盾しなければ、
  3. 当該所有権界をもって筆界と推認する。

「筆界は目に見えない」「昔の公図・地積測量図は精度が低い」という特徴を逆手にとった方法というわけですね。調査士としては、2の段階で登記記録や公図と矛盾が生じないよういかに誘導するのかが腕の見せ所。

一方、建築基準法の敷地境界は…

さて、前置きが長くなりましたが、我々建築士が設計する「敷地境界線」についての解説に入ります。建築基準法としては「敷地(境界)」を次のように定義しています。

建築基準法施行令第1条
一 敷地 一の建築物又は用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地をいう。
(以下略)

敷地境界線は、設計者(建築士)が設定する任意の境界線です。法律上は筆界や所有権界とは一切関係ありません。

配置図には敷地境界線が何に接しているかを明示するため以下のような名称で記載すると思います。これらに法上の決まりはありませんが、特庁や審査機関ごと、もしくは担当者ごとの運用上のルールといったところでしょう。

  • 隣地境界線
  • 道路境界線(道路後退線)
  • 官民境界線
  • 水路境界線
  • 空地境界線

「筆界・所有権界」と「敷地境界」の関係

建築基準法では、不動産登記法や民法との関係については一切触れられていません(建築基準関係規定ではない)ので、建築確認時の審査項目に筆界・所有権界については当然入っておらず、「書面審査の原則」により建築主事は提出された書面が問題がなければ、建築確認を下ろすことがルールになっています。

しかしながら、審査側・設計側両者とも所有権等についてまったく無視していいわけではありません。

過去に建築審査会へ提起された審査請求では、建築主(A)が他人(B)の土地(筆)を無断で敷地に入れた設計図書で確認処分を受けた件に対して、審査会はB氏の訴えを認めて確認を取り消し、A氏の提訴による裁判においても審査会の裁決が認められた、といったような事例があります。

上記の例は、主事が事前に「A氏がB氏の土地を無断で確認上の敷地に入れている」事実を知り得たケースであったため、そのような運びとなったものですが、建築確認が建築基準関係規定以外と摩擦を起こした好例かと思います。

でもこれって、疑義が生じた場合には事実関係について踏み込んで調査する必要があるため、審査側にとってはかなりの負担です。一方、業として設計する建築士については、筆界・所有権界の確認は建築士法第2条の職責の範疇かなとも思いますので、責任を持って設計していきたいところです。

そのほか、官地を敷地内に取り込むことは絶対に出来ませんので、その場合の敷地境界(官民境界)筆界(官民境界)と一致させる必要があります。実際の設計業務では、そのあたりもリサーチする必要があるんですね。

境界確定・測量をしない建築計画について

繰り返しますが、建築基準法上だけを考えた場合は筆界所有権界は考慮しなくても良いので、他法令を犯さない範囲で設計者は自由に敷地境界を設定できます。これを利用したのが「敷地分割」です。

敷地分割は↓記事で解説しています。

また、別の言い方をすると敷地境界筆界はズレていても良いというこになるので、敷地の設定には厳密な境界確定・測量は必須ではありません。その場合、施主からの聞き取りなどにより、所有権界を推定して敷地を設定することになると思います。

そして、完了検査時に図面と現実の空間に相違がなければ、何の問題もありません。

建築基準法はあくまで実際の空間を対象として、建築物とその敷地の防火・安全・衛生について最低限の基準を定めているわけですから、緊急車両が近寄れるとか、採光・通風が確保できていることを審査対象としているのです。

道路境界線で知っておくべきこと

今一度、道路の定義について振り返りつつ道路境界について気を付けるべきことを2点あげます。

①個人の土地に道路境界線が食い込む場合はけっこうある

官民境界確定時に、現況を無視して官有地台帳の幅員で境界を確定したり、「勝手に側溝を入れられた」旨を主張する人が現れることで、現況道路敷内に官民境界(筆界・所有権界)が発生することがあります。

しかし、たとえ筆界が動いたとしても、基準法上の道路には関係ありませんから、基準法の敷地設定としては道路境界線までしか敷地に入れることはできません。

  • 道路認定範囲が自分が所有している土地に食い込んでいる(1項1号道路)
  • 道路位置の指定を受けた幅員より現況が狭いとき道路位置の復元が必要(1項5号道路)
  • 2項道路はセットバックラインがあくまで道路境界線となる(2項道路)
②2項道路の道路境界線はあくまで道路中心から2mのライン

現況道路敷に2m接していない旗ざお敷地でも、2項道路沿いであれば接道を確保できるかもしれません。というのも、法42条2項の法文のとおり、2項道路については道路の中心から2mの範囲を道路と見なすから。

まとめ

「境界」をテーマに建築士に必須の知識について整理してきました。

  • 筆界は不動産登記法(公法)に定められた目に見えない不動のもの
  • 所有権界は民法(私法)の所有権の概念に内在し、当事者同時が話し合いで決めるもの
  • 建築基準法の敷地境界は上記2つの境界と直接関係ないが、実務的には考慮せざるを得ない

このへんの話題は、近隣との関係なので非常にデリケートな問題です。トラブルにならないように、建築計画前のリサーチはしっかりやっておきましょう。

※所有権界上の共有ブロック塀については以下のリンクから

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