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【建築士試験】既存不適格建築物の増改築

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今回のキーワードは「既存不適格建築物」

そもそも、「きぞんふてきかく?」という方は以下の記事をチェック!

法令上は「既存不適格」という言葉は定義されないため、試験には「建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている○○」と表現されます。

行き来する法文のエリアは大きく2つだけ。
・法86条の7 ⇒ 緩和を受ける条文の確認
・令137条の2~12 ⇒ 「遡及適用緩和のための工事の規模」の確認
・令137条の13~14 ⇒ 「独立部分の基準」の確認

つまり、選択肢に「建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている」ときた瞬間に法86条の7を開き、令137条の2~14のどれに関連するかをチェックすることが基本動作です。

出題にあたっては、法86条の7第1項に登場する「政令で定める工事範囲(=遡及適用緩和)」と、第2項に登場する「別の建築物と見なせる部分(=独立部分)」についてよく狙われます。

また、選択肢自体は、避難施設・構造・設備・石綿などのどのようなジャンルの設問にも混ぜ込みやすいので、予期せぬところでしれっと出題されるため注意が必要です。よって、基本的な解法だけを覚えておいて、柔軟に対応できるように準備しておくのが正解への近道です。

設問は正or誤で判断してみてください。「+解答と解説」をクリックすると解答と解説が読めます。

問1

構造耐力の規定に適合していない部分を有し、建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けている延べ面積3,000㎡の建築物について、構造耐力上の危険性が増大しない大規模の修繕を行う場合においては、現行の構造耐力の規定の適用を受けない。

[su_accordion][su_spoiler title=”解答と解説” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” anchor_in_url=”no” class=””]【正】既存不適格建築物:大規模の修繕又は模様替
既存不適格建築物関係の問題の一般的解法は以下のとおり。


「法3条2項の規定を受けている」ことから既存不適格建築物に関する問題であることを察知。まずは入口の条文である法86条の7第1項をチェック。政令に定める範囲内の建築行為であれば、現行規定の適用を回避できることを確認。


次に、法令集には条文の脇か下に関係法令がメモ書きしてあると思うのでそこをチェック。政令に定める範囲内とは令137条の2~令137条の12に規定されていることを確認し、まずは最初の137条の2が記載されいてるページを開く。


今回の設問は構造耐力関係なので、137条の2の条文をひとまずチェック。すると増改築に関する規定のみで修繕又は模様替については規定していないことが分かるため、今回は読み飛ばす。そのあとは、137条の2から順番に今回の工事に該当する条文を探していく。すると、137条の12に大規模の修繕又は模様替に関する規定を発見。


1項に、法20条(構造関係規定)の規定の適用を受けていない建築物の大規模の修繕又は模様替については、当該建築物の構造耐力上の危険性が増大しないものを政令で定める範囲内であるとしている。

よって、正。

政令で定める範囲内の建築行為については、基本的にこの解法でOKです。「法3条2項の規定を受けている」文言を見たら、既存不適格建築物の問題と解釈して、反射的にこの動作ができるといい感じです。
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問2

主要構造部を耐火構造とした延べ面積1,500㎡、地上3階建てのホテル(排煙設備に関する技術的基準に適合せず、建築基準法第3条第2項の適用を受けているもの)で、当該基準の適用上一の建築物として増築をする場合において、その増築部分と所定の防火設備により区画された既存部分には、当該基準は適用されない。

[su_accordion][su_spoiler title=”解答と解説” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” anchor_in_url=”no” class=””]【正】既存不適格建築物:独立部分(避難施設)
まずピンとこなきゃいけないのが、排煙設備の規定=法35条ということ。
既存不適格建築物に関する規定の入り口である法87条の7について、基本的には1項をチェックすればOKなのですが、構造(法20条)と避難施設(法35条)については2項に「別の建築物と見なせる部分(=独立部分)」に関する条文が用意されています。

で、2項を訳すと、既設部分に独立部分(A)独立部分(B)がある場合、(A)に増築するのであれば、(B)には現行法を遡及適用しないよ、というもの。

ということで、今回は排煙に関する規定の既存不適格建築物なので、まずは法87条の7第2項をチェック。すると、別の建築物と見なすことができる部分(=独立部分)に関する基準については令137条の14に規定されていることが分かるため、そちらへ移動。

令137条の14は、1号に構造、2号と3号に避難施設の独立部分の基準について規定している。

2号は、117条2項各号の部分(=基準法5章第2節(廊下、避難階段及び出入口の避難施設)について、別の建築物と見なす部分)で、つまり開口部の無い耐火構造の床・壁で区画されれば独立部分とするとしています。

3号は排煙設備のみに適用される規定で、要約すると、「開口の無い準耐火の床又は壁」+「煙感・遮煙の防火設備」で区画されれば独立部分となる、としています。

よって、今回は3号にあたるため、答えは正。
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問3

事務所と物品販売業を営む店舗とが構造耐力の規定の適用上一の建築物であっても、各用途の建築物の部分がエキスパンションジョイントのみで接している場合、物品販売業を営む店舗の建築物の部分において増築を行うときには、事務所の建築物の部分には現行の構造耐力の規定は適用されない。

[su_accordion][su_spoiler title=”解答と解説” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” anchor_in_url=”no” class=””]【正】既存不適格建築物:独立部分(構造関係)
遡及適用についての設問で、「一の建築物であっても」ときたら、法86条の7第2項の「別の建築物と見なせる部分(=独立部分)」に関する問題であることを察知します。よって、令137条の14へ移動します。

構造に関する独立部分についての規定は1号に定められていて、内容としては、令36条の4⇒エキスパンションジョイントで接続されたそれぞれの部分は別の建築物と見なしますよ、というもの。

つまり、物販(A)事務所(B)は一の建築物だけど、(A)(B)はエキスパンションジョイントで接続されているため、構造的には別の建築物と見なせる(=それぞれが独立部分)といえます。

よって、物販(A)へ増築する場合には事務所(B)へ法20条は遡及適用されないので正。
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問4

石綿が添加された建築材料が使用されていることにより建築基準法第3条第2項の規定の適用を受けているる倉庫について、基準時における延べ面積が1,200㎡のものを増築して延べ面積1,500㎡とする場合、増築に係る部分以外の部分においては、当該添加された建築材料を被覆する等の措置が必要となる。

[su_accordion][su_spoiler title=”解答と解説” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” anchor_in_url=”no” class=””]【正】既存不適格建築物:石綿(アスベスト)
「法3条2項の規定を受けている」が来た瞬間、もう反射的に法87条の7を開いているはず。今回は既存不適格部分が構造や避難施設ではないので、2項は関係ない。1項をチェックして、法28条の2(石綿の規定)があることを確認。
次に、令137条の2から順番に確認していき、令137条の4の3が石綿に係る制限緩和であることを確認。
1号から3号を読むと以下に適合することが必要であることがわかる。

 1号:増築部分が既設部分の床面積の1/2を超えないこと
 2号:増築部分は石綿を使用しないこと
 3号:国交大臣が定める基準で、既設部分の石綿の被覆・固着ができていること

3号より、既設部分の石綿使用建材が被覆処理されていることが条件であるため、設問は正しい。
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関連法令Tips

設問にしなかった、構造(法20条)に係る遡及適用緩和の工事範囲として令137条の2がありますが、他に比べて分かりにくいため、俯瞰用にザックリと表にしてまとめておきます。

条文
令137条の2
増改築部分の床面積の規模条件構造計算仕様規定
1号全て
Exp.J等なし
建築物全体が
現行基準に適合
【増築部分】現行基準に適合
【既設部分】耐久性等関係規定などに適合


Exp.J等あり

【増築部分】現行基準に適合
【既設部分】一定基準に適合
【増築部分】現行基準に適合
【既設部分】耐久性関係等規定などに適合
2号既設部分の
1/20を超え
1/2以内

四号建築物以外
建築物全体が
一定基準に適合
建築物全体が
耐久性等関係規定などに適合

四号建築物
不要【基礎以外】現行基準に適合
【基礎】補強基準に適合
3号既設部分の1/20以下
かつ50㎡以下
【増築部分】現行基準に適合
【既設部分】構造耐力上の危険性が増大しない

※一定基準:令第3章8節に規定する構造計算。吹き抜け部分増床など、増改築後の建築物の架構を構成する部材に増改築前のものから追加及び変更がない場合は、地震に関して「耐震診断基準」によることができる。また、Exp.Jで構造上分離されている場合、地震以外に関しては令82条1~3号までに規定する構造計算を行うことができる。

※耐久性等関係規定など:「など」とは、屋上突出物、給排水設備、昇降機、屋根ふき材などについて現行規定に準ずる検討定めています。

上記2つの※は平17国交告第566号に具体的な内容が定められています。

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