単体規定防火避難規定

採光チェックは3つの条文だけ!全貌の理解でリスク回避

単体規定
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この記事のポイント
  • 採光チェックに関係する条文は全部で3つ。
  • 法28条(一般構造)⇒健康保護のため
  • 法35条(避難)⇒避難活動のため
  • 法35条の3(防火)⇒救助活動のため
  • 条文ごとの目的が分かれば、規制&緩和の理解に繋がる。

こんにちは、一級建築士のくるみです。(twitterはこちら

建築基準法の採光チェックに関する規定は3つの条文が全てです。が、条文ごとにチェックする開口面積が床面積の1/7だったり1/20だったりと、無窓になる条件とそれによる規制も様々。

採光無窓には厳しい規制も用意されており、根拠条文うやむやなままにチェックをしていると取り返しのつかないミスに発展しがちです。

本記事では「理解」による採光チェックでリスク回避の勘所を押さえられるよう解説します。D/H×…などの具体的な有効開口面積の計算方法はまた別の記事で。

採光は3つの条文が全て

採光チェックとは、室の床面積に対して、光を取り入れるため必要な窓の大きさが確保されているか確認する作業です。法令で定められた大きさの窓を確保できないことを(採光)無窓と言います。

関係する条文は法第28条法第35条法第35条の3が全て。まずは表にしてざっくりとしたイメージをつかみましょう。

根拠条文チェック対象となる室必要有効開口面積無窓になると・・・
法第28条住宅、学校、病院などの居室床面積 /5 or 7 or 10一発アウト(緩和なし)
法第35条全ての居室床面積 /20避難規定がかかる
法第35条の3全ての居室床面積 /20居室の区画 or 脱出救助用の開口部が求められる

これだけで、採光チェックの重要事項が3つ見えてきます。

①採光を検討する必要があるのは「居室」

無窓になるとどんな規制があるかはいったん置いといて、とにかく全ての居室は採光チェックを行う必要があるということ。逆に、居室以外の室は建築基準法的には原則採光について考える必要が無いんです。

居室かどうかの判断については↓の記事をご参照ください。

②法28条で無窓になったら一発アウト

法28条により、住宅・学校・病院などの人間が健康的に過ごすことが求められる建築物の居室については「床面積 /5 or 7 or 10」以上の有効開口面積が求められます。

そしてなんと、この規定(法28条)については緩和が無いので、必ず守る必要があります。

逆に、事務所や店舗などの用途は法28条がそもそも適用されないので「床面積 /5 or 7 or 10」のチェックは無視して、法35条と法35条の3の「1/20」だけを気にしたらOK。

法28条は安全や健康に関する「一般構造」の規定なので、自然光をどれだけ建築物内に取り込むか、という観点なんですね。

③法35条、法35条の3で無窓になると規制が強化されるだけ

法35条法35条の3は、無窓になっても避難規定がかかったり区画が求められるだけ。つまり、計画によっては何とかなることもあります。(何ともならないこともあるので…後述します。)

法35条と法35条の3は「防火避難」に関する規定なので、万が一の火災時に避難や救助ができるように計画されればOKなんですね。

3条文の目的を理解しよう

採光3条文ですが、政令まで掘り下げると規制の内容が分かり、規制の内容から「なぜ各条文に従って採光チェックをしなければならないか」が見えてきます。

法第28条:健康のため

法28条を要約すると、「政令に定める建築物(居住、学校、福祉)の居室」は「政令に定めるサイズ(床面積1/5,7,10以上)の開口部」を設けないさいよ、となります。つまり法28条は、居住・学校・福祉に係る建築物について、そこで過ごす人の健康を保護するために自然光が入らない居室を禁止しています。

実務的には令19条の内容を細かく把握する必要がありますが、短いのでサラッと読んじゃいましょう。

・令19条1項 ⇒ 対象の建築物の用途
・令19条2項 ⇒ 対象の居室
・令19条3項 ⇒ 必要な開口部のサイズ

施行令第19条 法第28条第1項(法第87条第3項において準用する場合を含む。以下この条及び次条において同じ。)の政令で定める建築物は、児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く。)、助産所、身体障害者社会参加支援施設(補装具製作施設及び視聴覚障害者情報提供施設を除く。)、保護施設(医療保護施設を除く。)、婦人保護施設、老人福祉施設、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム又は障害福祉サービス事業(生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)の用に供する施設(以下「児童福祉施設等」という。)とする。

 法第28条第1項の政令で定める居室は、次に掲げるものとする。
  保育所及び幼保連携型認定こども園の保育室
  診療所の病室
  児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る。)
  児童福祉施設等(保育所を除く。)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの
  病院、診療所及び児童福祉施設等の居室のうち入院患者又は入所する者の談話、娯楽その他これらに類する目的のために使用されるもの

 法第28条第1項に規定する学校等における居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合は、それぞれ次の表に掲げる割合以上でなければならない。ただし、同表の(一)から(五)までに掲げる居室で、国土交通大臣が定める基準に従い、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものにあつては、それぞれ同表に掲げる割合から十分の一までの範囲内において国土交通大臣が別に定める割合以上とすることができる。

居室の種類割合
(一)幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室1/5
(二) 前項第一号に掲げる居室
(三)病院又は診療所の病室1/7
(四)寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室
(五) 前項第三号及び第四号に掲げる居室
(六)(一)に掲げる学校以外の学校の教室1/10
(七) 前項第五号に掲げる居室

とはいえ、住宅、診療所、保育所として良識のある設計をすれば自ずと適合される規定だとは思いますが…。狭小地の場合には要注意ですね。

法第35条:避難のため

法35条では、「政令で定めるサイズ(床面積/20)の開口部」を有しない居室がある※は「政令で定める避難規定」に適合するようにしないさいよ、とあります。つまり法35条は、開口部が少なく火災知覚が遅れるような室がある階は避難しやすいように規制を強化しています。

※令117条により、採光無窓居室を有することにより避難規定がかかる対象は階だけに限定されます。

法第35条 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物、政令(令116条の2)で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1,000㎡こえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令(※)で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

具体的には法35条→令116条の2により無窓になると、令117条により以下の規制がかかります。

政令(※)で定める技術的基準
・直通階段の設置(施行令第120条)
・屋外への出口(施行令第125条)
・非常用照明(施行令第126条の4)
・敷地内通路(施行令第128条

小規模の建築物であれば、自然と適合しちゃうような規定もあり、難しくないですね。非常用照明は分かりやすくコストに直撃するため、要注意です。

法第35条の3:救助のため

法35条の3では、「政令で定めるサイズ(床面積/20または人が通れる大きさ)の開口部」を有しない居室を区画する主要構造部は耐火構造とするか不燃材料で造れ、とあります。つまり法35条の3は、採光がとれず、脱出&救助も出来ないような居室を可燃材で造ることを禁止しています。

無窓居室は一般的に火災知覚が遅れるので、主要構造部の耐火・防火性能を高めることで、避難するための時間と救助隊が到着するまでの時間を確保することが目的なんですね。

注意すべきは、(※)室を区画する主要構造部を「耐火構造とするか不燃材料で造る」というのは、木造では現実的ではない為、かなり厳しい規制となるということ。木造でどうしても採光無窓を計画する場合は、人が通れる大きさの開口部(令111条二号)を設置する道を検討するしかありません。

施行令111条 法第35条の3(法第87条第3項において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。
 一 面積(第20条の規定により計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の1/20以上のもの
 二 直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径1m以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、75cm以上及び1.2m以上のもの

建築物防火避難規定の解説のアフターフォローにも、「法35条の3の区画は木造の準耐火構造で何とかならないか」という質問がありますが、一蹴されております。厳しいですね。

当サイトでは繰り返しお伝えしていますが、「防火避難規定の解説」は日本建築行政会議が編集しており、各特定行政庁の取扱いのスタンダードとなっています。これを持たずに設計するのは大変危険ですので、お手元に無い方は購入をおすすめします。(2021年6月発刊の防火避難規定の解説2016(第2版)が最新です。)

法35条の3には、(※)「区画」「主要構造部」という2つの用語が登場しましたが、その言葉をどう解釈するかが特定行政庁によって微妙に異なることが厄介です。

というのも、法2条五号に定義する主要構造部では「構造上重要でない間仕切り」は主要構造部には該当しないとされていますが、そのまま考えると法35 条の3で耐火・不燃化しなければならない部分が不明確になってしまいます。

また、「不燃で造る」ことに仕上げを含むか含まないか。「区画」というからには防火上主要な間仕切りのように天井裏・小屋裏まで達せしめなければならないか。配管の貫通措置は…。

「防火避難規定の解説」にも書いてなくて、法文に定められていないことを判断するため、審査機関又は特定行政庁への事前協議は必ず行った方が良さそうです。

まとめ

以上で、採光関係3規定の全貌を解説しました。

採光チェックは単体規定の基本中の基本ですが、建築士でも何となく「1/7」や「1/20」をチェックしている方もいらっしゃるようです。関係するたった3つの条文と、それぞれの目的と規制を理解しておくことで、合理的な設計とリスク回避の勘所を押さえていきましょう。

  • 採光チェックに関係する条文は全部で3つ。
  • 法28条(健康)⇒対象の用途は限られるが、適合しないと一発アウト。
  • 法35条(避難)⇒無窓は避難規定が強化されるが、小規模なら何とかなる。
  • 法35条の3(救助)⇒木造で無窓は絶望的。区画等の定義について要事前相談。
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