用語と手続き

建築基準法の理解に必須の単語「居室」の定義を再確認

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この記事のポイント
  1. 建築基準法の「居室」の定義
  2. 居室かどうかの判断事例
  3. 居室にかかる法規制

建築の法規チェックにおいて、必ずついてまわる「居室」という言葉。意匠上めちゃくちゃ大事な、開口部の寸法や位置を検討する際も、この「居室」に当てはまるかどうかで法規上の制限が雲泥の差となります。

また、防火避難規定で頻繁に登場する「無窓居室」の検討についても、そもそもこの「居室」に当てはまるかどうかで思わぬ規制に引っかかったり、逆に検討すらしなくて良い場合だってあります。

今回は、そんな意匠設計のひとつの根幹である「居室」の定義について改めて考えてみます。

建築基準法の「居室」の定義を確認

まずは条文の確認。

建築基準法第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(中略)

四  居室 
居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。

(後略)

うん、せやな。という感じですよね。日本語としての意味は分かりますが、世の中の全ての室を機械的に「居室」or「非居室」に振り分けるにはフワッとした定義です。判断が微妙な室がある場合、設計者はそのフワッとした定義の中で泳ぐ必要があります。

特にその他これらに類するという文言は、危険な香りがします。この短い文言に無限の解釈を見出すのが建築基準法。それに加わる、継続的に使用する室という文言からも分かるとおり、居室かどうかを判断するポイントは室の利用目的ではなく「継続利用があるかどうか」であるということ。

そんな曖昧な判断基準じゃ、設計者が居室といえば居室になるし、非居室といえば非居室になってしまうようなものでしょ。ぶっちゃけ脱法行為も容易にできてしまうってことでは?

はい、それが「申請主義」というやつです。設計図書が建築基準法に適合していることを審査するのが建築確認である以上、審査側の判断根拠は設計者から出てくる情報だけですから。ただし、脱法が明らかな場合、審査側も簡単に良しとはしないので、そんなに無茶は出来ないと思っておいた方がよいですよ。

建築確認上、設計者(建築主)が継続利用すると判断した時点で、その室は文句なしで「居室」となります。

逆に、居室になるとあらゆる法規制がかかることから、大人の事情で居室と扱いたくない微妙な室を非居室と主張するには、それなりの合理性を持った説明をすることで、審査担当から疑義が出ないように事前に調整をしておいた方がよいでしょう。

居室かどうかの判断方法

さて、「居室」は法2条1項4号にフワッと定義されていることが分かりましたが、実施設計を進めるには居室or非居室を判断しないと法規チェックできませんので、全ての室について白黒ハッキリさせる必要があります。

居室or非居室の具体例

基本的には室名を社会通念に照らして考えればそう難しくはありません。例えば、以下の室はふつうの感覚で判断できると思います。

居室の具体例

住宅 :リビング、ダイニング、寝室、書斎
事務所:事務室、会議室、社長室、守衛室
病院 :病室、診療室、ナースステーション、待合室
店舗 :売り場、事務室、休憩室
工場 :作業室、研究室、事務室
その他:ホテルのロビー、劇場の客席、飲食店の客席

非居室の具体例

住宅 :玄関、廊下※、階段、トイレ、洗面所、浴室、納戸
その他:廊下、倉庫、機械室

このことを逆手に取った申請でよく見かけるのが、住宅で明らかに寝室っぽいのに室名が「納戸」として記載してある図面。ひどい場合にはご丁寧にエアコンまで記載されていて、居室感満載にも関わらず「納戸なので継続利用しない」との主張により申請が通ってしまう場合がほとんどでしょう。

このような計画は、設計者のコンプライアンスというか、技術者としてのモラルを今一度思い出してほしいところです。

廊下については、避難安全検証法が誕生するまではそもそも「室」として取扱われていませんでしたが、現在ではしっかりと「室」として扱われています。室ですので、居室か非居室かの判断も必要ですし、排煙の検討も必要になります。

微妙な判断になる室の具体例

同じ室名でも、居室or非居室の判断が分かれる例をいくつか挙げてみましょう。

ケース1【浴室】
住宅の浴室は通常、非居室です。しかし、銭湯や温泉旅館の大浴場は不特定多数の人が継続的に利用しますから、居室として取扱います。また、高齢者施設や病院の浴室なんかは利用者や患者が順番に利用することもあるため継続的に利用しているため、居室として取扱うことが多いと思います。

ケース2【打合せスペース・相談室】
学校や幼稚園、高齢者施設に設けられる「相談室」の取扱いは、悩むことが多いと思います。会議室と同等と考えると居室になるのですが、その利用方法から職員室と廊下の間などに配置されることが多く無窓になりがちであることから「継続利用しない」非居室として設計せざるを得ないことも多いと思います。打合せスペースも同様です。

ケース3【更衣室】
例えば、小さい事務所の更衣室で、出社時と退勤時にのみスタッフが利用するものは非居室で差支えないと思います。一方、スポーツクラブのような不特定多数の人が常時利用する場合は居室として取扱うことになるでしょう。

ケース4【台所】
有名なのは「昭和59年の全国建築行政連絡会議の取扱い」より、次に該当する場合に居室として取扱わないとしています。逆に、これらに該当しない限り、居室になるかもしれません。
①調理のみで、食事しないこと
②床面積が小さく(概ね3~4.5帖)、他室と明確に間仕切り等で区画されていること

ケース5【ホール・廊下】
この記事トップのアイキャッチ画像のように、住宅の廊下(縁側)に書棚と椅子を置いた場合はどうでしょう。また、最近は階段脇のホールに作業スペースを設けるプランもよく見かけますが、いずれも継続利用が前提ですから、私はいずれも居室となると思っています。

居室にかかる法規制

「居室」は、その定義のとおり継続利用がされる室ですから、環境&衛生、防火&避難について建築基準法による制限も厳しくなります。法規チェックを行っている項目のほとんどは、居室にかかる規定に対するチェックだったりするので、そのことを意識するとまた見え方が変わったりします。

環境&衛生の規定

居室の環境・衛生に関する制限としてはザックリと以下のとおり。
条文で言うと、法28、29条と令19条~22条の2までが該当してきます。

  • 採光に関する基準(法28条)
  • 換気に関する基準(法28条)
  • 地階に設ける居室の基準(法29条)
  • 天井高さや床高さに関する基準(令21条、令22条)

令21条に規定される「居室の天井高さは2.1m以上でなければならない」なんて改めて見ると「そういえば居室だけなんだなぁ」なんて思っちゃいますよね。

防火&避難の規定

居室の防火&避難に関する制限としては以下のとおり。
条文で書くと、法35~36条と令126条の2~126条の5、128条の3の2~129条が該当してきます。

  • 無窓の居室等にかかる避難施設に関する基準(法35条、法35条の3)
  • 排煙設備の設置に関する基準(令126条の2、令126条の3)
  • 非常用照明の設置に関する基準(令126条の4、令126条の5)
  • 壁や天井の内装仕上げに関する基準(法35条の2、令126条の3~令129条)
  • 無窓の居室等にかかる主要構造部に関する基準(法35条の3)

法35、36条は、防火避難関係をほぼ網羅する部分なので、それだけ居室に対しては制限が厳しいということですね。

他にも、施行令80条の3では、「土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法」という規定があり、居室を有するかどうかで適用の可否が変わる規定となっています。

土砂災害特別警戒区域についての概要は↓の記事をチェック!

まとめ

建築基準法は、居室限定にかかる規定が数多くあります。
もう覚えてしまっているような規定も、改めて考えると居室限定の制限だったりして、目からウロコなんてことも、たまにありますので改めて条文を読むのも悪くありません。

・居室かどうかは、室名に惑わされずに「継続利用」するかしないかで判断する。
・特定の人に限らず、別の人が入れ代わり立ち代わり使用する室も居室である。
・自信がない場合は申請先と事前に調整した方が良い。

非居室の主張が通らずに、思わぬ規制がかかってくることだけは避けたいところ。よくお付き合いのある特庁や審査機関の取扱い事例を事前に確認しておくのも有効かもしれません。

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