用語と手続き

届出忘れがち!中高層建築物紛争予防条例とは

用語と手続き
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この記事のポイント
  • 中高層建築物紛争予防条例とは
  • 届出が必要な建築物と届出の流れ
  • 斡旋と調停の仕組み

実施設計時に提出しなければならない申請・届出などの手続きって、ひと昔に比べて本当に多くなりました。

例えば、景観に関するもの、バリアフリーに関するもの、省エネに関するものなどなどなどなど…。

それぞれの法令に対して適用される建築物かどうかのチェック、適合義務の有無、提出図面の作成、適合表の作成…と本当に意匠設計者の確認申請前後の手間は年々煩雑になっていきます。報酬は上がらないのに。(愚痴です)

ただ、例に挙げたものは全て、景観法・バリアフリー法・省エネ法などの大元となる法律がありますし、プランや仕様・納まりに大きく影響するため、嫌でも意識せざるを得ません。

そんな中、異色なのが中高層建築物紛争予防条例による届出。

これ、ほんと放任主義の設計事務所ですと、初任者が忘れやすい(存在に気付きにくい)条例なので注意が必要です。

今回は、そんな条例について解説します。

中高層建築物紛争予防条例とは

まずは、条例の目的を理解しましょう。

条例の生い立ち

紛争予防のための条例は、”日照権”に係るものが歴史として長く、昭和44年に神奈川県川崎市の日照権についての要綱が初めて策定されたものだそうです。

その流れをくむのが、中高層建築物紛争予防条例です。

この条例の目的はその名の通り、中高層建築物に関する紛争を予防することであり、多くの自治体が策定しています。「マンション建設反対!」的な住民運動、身近には無いかもしれませんが、何となくイメージわきますよね。

そんな条例なくても、前もって高い建物が建たないよう都市計画で規制しておけば良いのでは?

従来、都市計画行政においては事前確定的な規制・誘導が主体となりますが、地区計画の策定など詳細な土地利用計画を事前に制定することには、地区住民の合意形成の難しさゆえ限界があります。

じゃあ建築された後、裁判して解決するしかないかぁ…

一方、既に行った建設行為に対して司法に調整を委ねていくこともやはり難しいのです。
なぜなら、判決が「損害賠償」という形で利益衡量を図った場合、不動産という財の非代替性ゆえに次の建替更新時まで都市空間としての問題点の解決が見込めないから。逆に、判決が「撤去」を命じれば、事業者の負担はあまりにも大きく実現性に欠きます。

よって、中高層建築物建築物によって近隣住民の何らかの権利が侵害される可能性がある場合、事前確定型の都市計画と事後調整型の司法の間で「待った」をする仕組みが必要だったわけです。そこで誕生したのが、中高層建築物紛争予防条例です。

届出の流れ

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出展:秋田市HP

中高層建築物紛争予防条例は、各自治体どこも同じような名称と内容ですが、基本的には、一定規模以上の建築行為に関して建築確認申請を提出する何日か前までに標識を設置し、近隣住民への説明義務と、要望があれば周辺住民に説明会の開催を課しているものです。

高さ10mを超える建築物の場合、確認申請を提出する30日前までに標識の設置をしなきゃいけないところが多いです。住居系の用途地域では厳しくしていたりするところもあるため、詳しくは各自治体の要綱を確認してください。

そして、上記の結果を特定行政庁に報告する必要があります。

そのときの添付資料として、電波受信障害の予測範囲を調査したうえで、障害を受ける方がいる場合は協議と対処も求められることもあります。

また、「紛争が発生した場合は報告者が責任を持って解決にあたります。」という誓約書も同時に提出させられることが多いです。

役所目線では、もしも紛争になったときのために、事前に準備できることは業者にやらせておく。ということですね。

斡旋と調停の仕組み

近隣住民が建築行為に対して異議がある場合に対し、「斡旋」「調停」という制度を設けており、事業者と住民の双方が合意すればそれらの制度を利用できます。

「斡旋」は行政が事業者と住民の意見交換を促す場を設置する仕組みで、「調停」は学識経験者からなる調停委員が事業者と住民双方の主張や物理的な状況をもとに調停案を作成するもので、準司法的な手段として位置付けられています。調停手続きの方法は、自治体によってほんとに様々。

斡旋により行政指導を強く行っているところ(福岡市)もあれば、最初から第三者機関にゆだねる方式をとっているところ(広島市)もあるみたいです。

また、標識の設置については確認申請の20日から30日前のところが多く、斡旋→調停の流れを経ると事業者の方が工事着工直前であることを理由に調停を受諾しないことが実際にあるらしく、住民側としては工事着工までの非常に限られた時間の中で斡旋や調停を申し出なければなりません。

まとめ

さて、紛争への対応についてこれ以上深入りすると設計業務を行う建築士の本業から外れていきそうですので、ここまでとします。

  • 高さ10m以上の建築物となると届出が必要な自治体が多い
  • 標識の設置期限は確認申請提出の約30日前の自治体が多い
  • 届出には、住民説明や電波受信障害の検討の報告が含まれる
  • 紛争になったら、行政による斡旋と調停の制度を活用する

なお、細かい規定や提出物については各自治体のホームページに条例や要綱が公開されているため、敷地ごとに調べることが大前提ですが、基本を覚えておけば中高層建築物紛争予防条例が藪から棒にならないと思いますので、新任者の方は覚えておきましょう。

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