単体規定

落下防止 手すり に関する法令・規格・基準まとめ【階段・バルコニー】

単体規定
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この記事のポイント
  • 「手すり」に関する法令、規格、基準はいっぱいある
  • 設計条件によって、守るべき規格や基準は異なるが…
  • どの基準も概ね「手すり高さ1,100mm以上」「手すり子間隔110mm以下」である

お疲れ様です、一級建築士のくるみです。(twitterはこちら

落下防止用の手すりの法令・規格・基準・ガイドラインについてまとめます。

建築業界には、落下防止用の「手すりの高さは1.1m以上」「手すり子の間隔は110mm以下」という掟みたいなものがあるんですが、その根拠について知らない方、意外にいらっしゃるんじゃないでしょうか。

階段やバルコニーの手すりは人命に関わるため必要ですが、その最低限の基準と根拠は設計者としては必ず知っておく必要があります。関係する法令や規格・基準・ガイドラインはざっと以下のとおり。

根拠名称適合義務備考
法令建築基準法施行令あり手すり設置の義務そのものを定める。法律なので必ず適合する必要あり。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)なし住宅性能表示制度を利用する場合には、一定の基準に適合させます。
規格・基準・ガイドライン日本産業規格(JIS A6601:2020)なし建築の設計者及びエンドユーザーは、参考程度で捉えればOK。
優良住宅部品評価基準(BL基準)なし優良住宅部品認定制度を利用する場合に、BL認定された既製品を採用します。
建築工事標準詳細図(国交省大臣官房官庁営繕部整備課監修)なし公共工事で指示があれば採用します。
子育てに配慮した住宅のガイドライン(東京都都市整備局)なし自治体が認定制度など運用していて、その制度を利用する場合に適合させます。

どんなときにも絶対に適合させる必要ががあるのは、建築基準法施行令のみ。無理して守らなくても良い規定や基準は合理化して、意匠性向上やコスト削減をするのが設計者の腕の見せ所。

建築基準法施行令

実は「建築基準法」には手すりという言葉自体が登場しません。登場するのは「建築基準法施行令」で、手すりの設置に関する基準について定めているのは以下の条項が全てです。(※エレベーター関係の手すりは除く)

【一般構造:階段の手すり】
 ・令第23条第3項(階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法)
 ・令第25条(階段等の手すり等)
【構造強度:組積造の仕様規定】
 ・令第59条の2(手すり又は手すり壁)

【避難施設:屋上広場、バルコニーの手すり】
 ・令第126条(屋上広場、2階以上の階にあるバルコニー等)

令59条の2(組積造建築物の手すり)については普段気にすることはありませんので、割愛しますね。法文を直接ご確認ください。

一般構造:階段の手すり

令23条3項と令25条は第2章「一般構造」の規定なので、全ての建築物に適用されます。

そして、令25条にはズバリ「階段には(少なくとも片側に)手すりを設けよ」とあり、さらに、「手すりを設けない側についても側壁や手すりを設ける」ことを義務付けています。この規定に例外はありません。

建築基準法施行令第25条 階段には、手すりを設けなければならない。

 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。

 階段の幅が3mをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが15cm以下で、かつ、踏面が30cm以上のものにあつては、この限りでない。

 前3項の規定は、高さ1m以下の階段の部分には、適用しない。

また、高さ1m以下の階段の部分には手すりは不要ともあることから、その目的は昇降の補助もさることながら落下防止の観点から設けられた規定であることが分かります。

だから、「手すりの高さ」などの細かい規定が設けられていないんですね。

平成12年6月1日の法改正前は、階段の両側に側壁などがない場合は少なくとも片側に側壁や手すりを設ければ適合だったこともあり、古い建築物では手すりの無い階段も散見されます。改修設計や定期報告の調査時には、この基準時が既存不適格かどうかの分かれ目となります。

ちなみに、令23条3項は、手すりの側壁からの出幅については10cmを限度にして階段の有効幅に含めても良いよ、というあの規定です。だから、基本的には階段の手すりは側壁から10cm以上飛び出して設計することはありません。

避難施設等:屋上広場、バルコニーの手すり

令126条には「屋上広場、バルコニーには高さ1.1m以上の手すり壁を設けよ」とあります。建築基準法の中で唯一、手すりの寸法を定める規定です。

建築基準法施行令第126条 屋上広場又は2階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。

 建築物の5階以上の階を百貨店の売場の用途に供する場合においては、避難の用に供することができる屋上広場を設けなければならない。

そしてなんと、令126条はそもそも以下の建築物にしか適用されません。(令117条)

  • 法別表第一(い)欄(1)項~(4)項の特殊建築物
  • 階数が3以上である建築物
  • 採光無窓居室を有する”階”
  • 延べ面積が1,000㎡を超える建築物

ということは、建築基準法的には、一般的な2階建て戸建て住宅のバルコニーに手すりを設置する義務は無いんですね。

住宅品確法

住宅の性能問題や欠陥などのトラブルが多く発生していることから、消費者保護の立場から紛争を速やかに処理できるよう「住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」が、平成12年4月から施行されています。

その中で運用される住宅性能表示制度により、国土交通大臣の登録を受けた『登録住宅性能評価機関』が一定の基準に基づき住宅の性能を評価し、その結果を住宅性能評価書として交付しています。

住宅性能表示制度を利用をするかどうかは任意ですが、法律に基づき第三者の性能評価を得られ、紛争予防やローンや保険で優遇を受けることができるというメリットがあります。

表示される性能は、構造耐力、遮音性、省エネルギー性など10分野で、等級や数値などによって示されます。その内のひとつの評価方法基準「9 高齢者等への配慮に関すること」で、転落防止手すりの高さ及び手すり子の間隔の寸法について基準が定められています。

【手すりの設置基準(転落防止)】※バルコニー
〇手すりの高さ
(ⅰ)腰壁その他足がかりとなるおそれのある部分(以下「腰壁等」という。)の高さが650mm以上1,100mm未満の場合にあっては、床面から1,100mm以上の高さに達するように設けられていること。
(ⅱ)腰壁等の高さが300mm以上650mm未満の場合にあっては、腰壁等から800mm以上の高さに達するように設けられていること。
(ⅲ)腰壁等の高さが300mm未満の場合にあっては、床面から1,100mm以上の高さに達するように設けられていること。

〇転落防止のための手すり子で床面(階段にあっては踏面の先端)及び腰壁等又は窓台等(腰壁等又は窓台等の高さが650mm未満の場合に限る。)からの高さが800mm以内の部分に存するものの相互の間隔が、内法寸法で110mm以下であること。

日本産業規格(JIS)

意外にご存じない方がいらっしゃいますが…。2019年7月1日より「工業標準化法」は「産業標準化法」に変わり「日本工業規格(JIS)」は「日本産業規格(JIS)」に変わりました。

「日本工業規格」ってもう無いんですねぇ。

JISのベランダの手すりに関するものとして JIS A6601:2020「低層住宅用バルコニー構成材及び手すり構成材」があります。この規格は低層住宅の屋外に使用するバルコニー構成材、及び手すり構成材について規定されています。

転落防止の安全対策に関する事項としては、手すり子の幅に関して「床調整面から高さが 800mm以内の部分にあるものの相互の間隔にあっては 110mm以下の構造とする。」と規定されています。

JIS(=Japanese Industrial Standards)は、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた国家規格です。自動車や電化製品などの産業製品生産に関するものから、文字コードやプログラムコードなどの情報処理、サービスに関する規格などもあります。一般的に「標準(=規格)」は任意のものですが、法規などに引用された場合は強制力を持ちます。

建築基準法37条はJISとの関係を規定しますが、「手すり」についてはJIS規格としなければならない部分ではありません。よって、建築設計において必ず守らなければならない基準ではありません。

優良住宅部品評価基準(BL基準)

一般財団法人ベターリビングは、住生活水準の向上と消費者の保護を目的に優良住宅部品(BL部品)を認定し、普及を図っています。その中の優良住宅部品評価基準「墜落防止手すり」には「使用時の安全性及び保安性の確保」として、手すりの高さ、部材間及び手すりと躯体との隙間の寸法について規定されています。

手すりの高さに関する基準(抜粋)
a) 人体の触れやすい箇所に、バリ、メクレ、危険な突起物がないこと。
b) 笠木天端は物が置けない形状であること。
c) ユニット天端までの高さ
 腰壁等の高さ650㎜以上1,100㎜未満の場合 床仕上げ面から1,100㎜以上
 腰壁等の高さ300㎜以上650㎜未満の場合 腰壁等の上端から800㎜以上
 腰壁の高さ300㎜未満 床仕上げ面から1,100㎜以上
 ※腰壁等とは「腰壁その他足がかりとなるおそれのある部分」でありユニットの下弦材等足がかかる部分も含まれる。 ※足がかかる部分から次の高さ650㎜以下に再び足のかかる部分がある場合はその部分から 800㎜とする。
d) 部材間及び手すりと躯体との隙間
1) 手すりの笠木と笠木の隙間、手すり子と手すり子の隙間、及びこれに相当する部分の隙間は、110㎜以下であること。
2) 廊下・バルコニー用の下弦材と躯体(足ががり等)との隙間、窓用の下弦材と窓台との隙間、及びそれに類すると判断される箇所の隙間は、90㎜以下であること。
3) トップレールの隙間(躯体の隙間を含む)はすべて110㎜以下であること。
e)墜落防止手すりに歩行補助手すりを取り付ける場合は、手すり子の下弦材等の足のかかる部分から、650㎜を超える高さに設置すること。

BLマークの付いた製品には、瑕疵保証と損害賠償の両面からBL保険がついています。また、BL部品を採用すると住宅金融公庫の割増融資を受けられたり、水回りのリフォーム工事の場合、無担保のクイックリフォームローンの対象になるなどの特典もあります。

BL認定製品はメーカーが認定を受けるために準拠する基準であるため、優良住宅部品評価基準を建築の設計者が直接気にする必要はありません。既製品を採用する際に「一定の基準を満たしているんだな」という理解をしておけばOKです。

建築工事標準詳細図

公共工事の設計業務ではおなじみの、官庁営繕の標準詳細図集です。国交省HPからダウンロードすることができますし、製本版も一般販売されています。

「建築工事標準詳細図」は主に官庁営繕の設計業務に用いられるイメージですが、不特定多数が利用する公共的な建築物全体に準用できる汎用性を持つ、設計者の強い味方です。以下に、図面を引用しますが、屋上及び階段について手すりの標準図が掲載されています。

【屋上】
手すり高さ1,100mm以上 手すり子ピッチ110mm以下
【階段】
階段の上端、バルコニー等では足がかりから高さ1,200mm以上 手すり子ピッチ110mm以下

出典:社団法人 公共建築協会 建築工事標準詳細図(令和4年版)
出典:社団法人 公共建築協会 建築工事標準詳細図(令和4年版)

子育てに配慮した住宅のガイドライン(参考)

自治体が、建築物の施工者や管理者が子育てに配慮した建築物を検討する際に役立つ情報を取りまとめて、ガイドラインとして配布していたりします。代表的なものに東京都都市整備局の「子育てに配慮した住宅のガイドライン」がありますので、ご紹介します。

「第2編 Ⅱ 建物を整備する際の配慮事項 1住戸内 (1)基本性能等に関する配慮事項②転落防止・落下物による危険防止」として、ベランダの手すりの高さ、手すり子の間隔、足がかりになるものとして室外機等の設置位置の基準が示されています。また、横桟等足がかりになるものを設置しないとしています。

転落防止のための手すりの設置(抜粋)
(1) 手すりの設置高さ 次のアからウまでのいずれかとする。
 ア 床面(階段にあっては踏面の先端)から1,100mm(1,200㎜推奨)以上
 イ 高さが650mm未満の腰壁等がある場合、腰壁等から1,100mm(1,200㎜推奨)以上
 ウ 高さ650㎜以上800㎜未満の部分に腰壁等がある場合は、腰壁等から900㎜以上
(2) 居住者の日常の利用に供する屋上の手すりの設置高さ 床面から1,800mm以上
(3) 手すり子の間隔 床面(階段にあっては踏面の先端)及び腰壁等(腰壁等の高さが650mm未満の場合に限る)からの高さが800mm以内の部分に存するものの相互の間隔は、内法寸法で110mm(90㎜推奨)以下
○窓、開放廊下や階段の直下に道路、通路、出入口がある場合における落下物による危険防止措置を講じる。

出典:東京都「子育てに配慮した住宅のガイドライン」

東京都都市整備局「子育てに配慮した住宅のガイドライン」の場合は、認定制度も設けられており、一定の基準に適合し認定されると、物件のPRだけでなく、補助金や容積率の緩和という恩恵を受けられます。

まとめ

最後に、手すりに関する法令や規格・基準を表にしてまとめます。並べると気づきますが、「手すりの高さは1.1m以上」「手すり子の間隔は110mm以下」は概ねどの法令や規格でも共通しています。

なお、必ず守らなければならない決まりは、建築基準法施行令だけです。その他、設計者が気にするべきは住宅品確法の住宅性能表示制度(もしくは自治体のガイドラインに基づく認定制度)で、施主のメリットになる場合には基準に適合するよう設計するべきでしょう。

BL部品はメリットがある場合は認定された既製品を採用すれば良いし、JISも既製品を採用する際の参考程度でOKです。

根拠設置基準手すりの高さ
建築基準法施行令屋上広場、バルコニー1,100mm
住宅品確法
(バルコニー)
腰壁等の高さ650mm~1,100mmの場合床面から1,100mm以上
300mm~650mmの場合腰壁等から800mm以上
~300mm床面から1,100mm以上
JIS
BL基準腰壁等の高さ650mm~1,100mmの場合床面から1,100mm以上
300mm~650mmの場合腰壁等から800mm以上
~300mm床面から1,100mm以上
建築工事標準詳細図屋上水上仕上げ面から1,100mm以上
階段の上端、バルコニー等1,200mm以上
子育てに配慮した住宅のガイドライン腰壁等の高さ650mm~1,100mmの場合床面から1,100mm以上
300mm~650mmの場合腰壁等から800mm以上
~300mm床面から1,100mm以上
※屋上は1,800mm以上
根拠手すり子の隙間
建築基準法施行令
住宅品確法床面及び腰壁等から高さ800mm以内の部分は、内法寸法で110mm以下
JIS床面及び腰壁等から高さ800mm以内の部分は、内法寸法で110mm以下
BL基準手すりの笠木と笠木の隙間、手すり子と手すり子の隙間など、これに相当する部分の隙間は110mm以下
廊下、バルコニー用の下弦材と躯体(足がかり等)との隙間は90mm以下
トップレールの隙間(躯体の隙間を含む)は全て110mm以下
建築工事標準詳細図原則、110mm以下
子育てに配慮した住宅のガイドライン床面及び腰壁等から高さ800mm以内の部分は、内法寸法で110mm以下(90mm推奨)

大事なのは、各基準を参考にして安全な建築物を設計すること。根拠を整理して合理的にいきましょう。

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