お疲れ様です。ざっくり自主施工で、中古の一戸建て住宅を改修しながら暮らしている、一級建築士のくるみです。(twitterはこちら)
当ブログは建築法規がメインテーマですが、コラムとして建築に関することなら幅広くシェアしていく所存です。法規のことをお読みになりたい方は、この記事はすっ飛ばしてください!
我が家には、和室が数部屋(計26畳分)あるんですが、全て真壁納まり左官砂壁の純然たる和室です。しかし、築ウン十年ということもあり、なかなかの痛み具合なのでした。
今回は、面積が大きいということもあるため、低コストのDIYで綺麗&高耐久の壁に変身させる方法を実践してみたのでシェアします。
まずは、砂壁の基本をおさらい
ぱっと見は同じ砂壁でも、年代によって納まりや下地が違います。
納まり | 下地 | 仕上げ |
真壁 | 土壁 | 左官砂壁 |
真壁 | ラスボード | 左官砂壁 |
大壁 | ラスボード | 左官砂壁 |
大壁 | 石膏ボード | 砂壁風クロス |
在来軸組工法の住宅で真壁納まりなら、まず左官の砂壁で間違いないでしょう。
逆に、2×4工法やプレハブ系、3階建ての住宅の場合は大壁になっていると思いますが、造作の化粧柱で真壁風に見せた造りとしている可能性もあるため注意してください。
比較的最近建てられてた大壁納まりのモダンな和室では砂壁風のクロスも見かけることがありますが、その場合は普通にクロスを張り替えられます。
注意すべきは、下地が土壁の場合には間柱や胴縁などが無いため、ビスによるボードの固定には工夫が必要であること。壁をコンコンとノックしてみて空洞感があれば、下地はラスボードor石膏ボードなので間柱があるはずです。
我が家は築ウン十年なので、真壁納まりの土壁+左官砂壁です。さて、どのように改修するか―。考えるのものまた楽しいものです。
改修の実践
方法その1 漆喰を上から塗る
この方法は、壁の納まりが真壁でも大壁でも対応できますし、下地も関係ありません。砂壁を残したまま、上から漆喰を塗ってしまうだけのお手軽な方法です。
工程とポイントをまとめると以下の通り
①壁の掃除
やわらかい箒などで、砂壁の表面についたホコリや弱い砂を落とします。
②養生
漆喰を塗らない箇所との境目にマスキングテープ等で養生します。漆喰の塗厚を考慮して1mm~2mmの隙間をあけた方が良いでしょう。
②シーラーの塗布
ローラーや刷毛を使って砂壁にシーラーを塗布します。砂壁なので、めちゃくちゃ吸うけど、めげずに塗っていきましょう。経験上、シーラーついてはオープンタイムは長め(2日くらい)とった方が良いと思ってます。乾燥後、表面を触って砂がポロポロ落ちてくる感じがなければOKです。
「シーラー」なんて書いてますが、DIYなので普通にホームセンターで手に入るものを使えば良いです。私はアサヒペンさんの「せんい壁砂壁おさえ」を使用しました。使用量の目安としては、8畳で4Lくらいでギリ足りると思います。
③凹凸が激しければ、パテによる補修
我が家の場合は下地の土壁もやられてましたので、えぐれている部分については、パテにより補修しました。この後、漆喰を塗るので、大雑把でOK。大きな凹凸がなければこの工程は不要です。
これも普通にホームセンターで手に入る内装補修用パテでOKです。
④漆喰を塗る
さて、ここからが本番。我々は職人ではありませんので、いかに失敗せずに完成させるかを最優先で考えます。そこで、DIY用の練済みの漆喰を採用したいと思います。塗り方については、各商品のホームページ等見てもらった方が分かりやすいので割愛します。
我が家はon the wallさんの「ひとりで塗れるもん」を使いました。色はカーミーブラウンを採用。8畳の部屋で22kg使い切るぐらいです。この商品のメリットは、1度塗りで工程が終わるところと、練済み系の漆喰商品の中でも比較的柔らかく、素人にも扱いやすいところ。
また、関連商品の「魔法の鏝だもん」。これがまぁ使いやすい。金鏝は角度をかちっと固めないといけませんが、この鏝はプラスチックで出来てるので、ちょっと手首がぶれてもいなしてくれます。
※他社の商品で、日本プラスターさんの「漆喰うま~くヌレール」がありますが、こちらは2回塗りが標準仕様です。仕上がりは「ひとりで塗れるもん」より、より本物の漆喰っぽそう。
「一級建築士なのに練るとこからやれよ!」と怒られそうですが…。施工の確実性、コストバランス、工期の短さ、お手軽を追求することが、住宅保守の要です。
⑤養生はがし、掃除して終わり
養生は、必ず塗材が乾く前にはがしましょう。
さて、工程写真は全然撮れてませんので、、完成の様子は以下の写真でご確認ください。
コンセントまわりは、鏝が入りにくくて苦戦しました。。
私個人的には、湿式の作業は時間との闘いになるので、ハードルが高く感じます。が、仕上がりはやはり良い感じですね。
方法その2 合板を上から張る
この方法は、材料調達の難易度的に真壁納まりの場合にのみおすすめします。
また、壁の下地が土壁の場合は固定方法に工夫が必要なので、まずは下地が土壁orボードを確認してください。
工程は以下の通り
①現地採寸と材料調達
畳寄せと柱、長押に囲まれた部分の長さを測ると、だいたい850mm×1,800mmには収まると思います。基本的にホームセンターで手軽に買える合板は910mm×1,820mmの3×6(サブロク)板なので、少しカットすれば丁度良さそうですね。
※大壁の場合、ボードを受けてくれる長押がないので、天井までボードを張り上げる必要があります。天井高さは基本的に2.1m以上あるため、3×8板を調達しなければならずおすすめできません。
我が家は部屋をアトリエとして使うためインダストリアル感のあるOSB(t=9mm)を採用しました。
理由は3つ。壁と柱のチリが15mmなので、多少むくってもそこに収まる厚さのボードでなければならないこと。荒々しいテクスチャなのでビスを打っても目立たないこと。表面に光沢があるので塗装やオイルフィニッシュの手間が要らないこと。
ボードをシナ合板やラワン合板にすると、塗装やオイルも自由ですし、もう少し落ち着いた雰囲気になると思います。※漆喰で仕上げた壁の完成写真に写っている建具がシナ合板+クリアのオイルフィニッシュなので見た目の参考になるかも。
改修工事で重要なことは、必ず現地採寸すること!四角形なら、四周すべて確実に測ってください。建築は、平行に見えてバチっている、長方形に見えて台形になっているものなのです。
②合板のカット
採寸に合わせてボードをカットします。最近はホームセンターでも寸法を指定したら、その場でカットしてくれるサービスがあるようです。が、コンセント周りの細かいところやミリ単位の誤差に関しては、やはり自分で何とかする必要があるでしょう。
ボードを枠にはめ込む作業を改修工事で行う際は、シビアな精度が求められます。下端は幅805mmなのに、上端は幅810mmなんてザラです。幅805mmでカットすると上端が5mmすきますし、幅810mmでカットすると下端が全然入りません。そういう世界です。
よって、我が家は3×6板のまま調達して、何度も現地合わせしながら丸ノコで調整しています。
私が愛用している丸ノコはマキタさんの「電気マルノコ 165mm M565」です。自宅DIYで取り扱う板の厚みはせいぜい30mmなので、丸ノコは外径165mmがベストだと思います。コストパフォーマンスもベスト。充電忘れのストレスがないので、丸ノコはコード式の方がオススメです。
③ビスもみ
case1 下地が土壁の場合 ⇒ サイドの柱を狙って斜めにビスをもむ
case2 下地がボード系の場合 ⇒ 胴縁か間柱を狙ってビスをもむ
【case1】下地が土壁の場合
図のようにおよそ6点以上、斜め45度で柱を狙ってビスをもみます。あまりフチに近すぎると合板が割れてしまうので、気をつける。また、コンセントの周りはしっかりと固定したいので、ビスを追加。
【case2】下地がボード系の場合
あらかじめ下地チェッカーで下地の位置にあたりをつけておき、そこを狙ってビスをもみます。やはり6点程度で良いでしょう。横胴縁の場合は胴縁を、胴縁なしの場合は間柱を狙います。
インパクトドライバはやはりマキタさんの「インパクトドライバMTD001(14.4V)」を使っています。DIYであれば必要十分で、コスパ良しです。
④あとは掃除して終わり
シナ合板やラワン合板ならこの後塗装orオイルフィニッシュがありますが、OSBならこのまま終わります。
さて、こちらも工程写真が撮れてませんので、(ほぼ)完成写真は以下でご確認を。
ボードはチリの中に納まっていますので、畳の上げ下げは問題なしです。
斜め45度から写真をとると、ビスの頭がこちらを向いています。
コンセントカバーは黒塗装して設置する予定です。
愛用のMTD001(14.4V)さん。
まとめ
漆喰と合板による砂壁の改修方法を2つご紹介しました。
- シーラーで固めて、うえから漆喰を塗る
- 上から合板を被せてしまう
DIYは、失敗を気にせず楽しむ心の余裕が大切です。私だって普段は職人の仕事を見ていて、いざ自分でやろうとすると全然上手くいかずにガッカリしますが、プロじゃないし当たり前なんですよね。
「住む」ことをアウトソーシングせずに自分でやってみましょう!