単体規定

【シックハウス&アスベスト】化学物質に関する規制まとめ

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この記事のポイント
  • 建築基準法で規制対象となる化学物質は3つだけ
  • アスベストクロルピリホスホルムアルデヒド
  • アスベストクロルピリホスは原則使用禁止
  • ホルムアルデヒドは③つの規制のクリアが必要

お疲れ様です、一級建築士のくるみです。(twitterはこちら

今回は『建築材料からの化学物質』に係る規定の全体像が見えるよう、分かりやすく解説します。

建築物の気密性能向上に伴い、建築物に使用される建材や家具から発散される化学物質により空気が汚染されやすくなり、吐き気や頭痛がするなどの「シックハウス症候群」が問題になりました。

そこで、2003年(平成15年)に建築基準法が改正され、建築材料からの化学物質に関する規制が新たに加わり、シックハウス対策の検討が必要となっています。

理解が必要な条項は以下が全て。多くはないので、サラッと理解しちゃいましょう。

(化学物質に関する規制全般)
・法28条の2 ⇒ 化学物質に関する規制のすべて
 一号 石綿等を現場で材料に添加するのは絶対NG
 二号 石綿等をあらかじめ添加した材料は原則NG(告示で例外有)
 三号 石綿等以外の有害物質を使う場合は政令の技術基準守れ

(用語の定義)
・令20条の4石綿等石綿だよ
・令20条の5 石綿以外の有害物質クロルピリホスホルムアルデヒドだよ

技術基準
・令20条の6クロルピリホス添加材料の使用は原則NG(告示で例外有)
・令20条の7ホルムアルデヒド対策① 使用面積の制限
・令20条の8ホルムアルデヒド対策②③ 換気設備&天井裏等の制限
・令20条の9ホルムアルデヒドに関する技術基準の特例

石綿(アスベスト)は法令でガッツリ規制され、クロルピリホスとホルムアルデヒドは政令で技術基準が定められているイメージですね。

石綿(アスベスト)に関する規制

石綿(アスベスト)は、法28条の2一号&二号により「原則、建築材料には使かっちゃダメ」と定められています。ただし、告示に定めるものは除かれるので、もう少し読み込む必要があります。

建築基準法 第28条の2
建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
 建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(次号及び第三号において「石綿等」という。)を添加しないこと。
 石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。
 居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。

平成18年 国土交通省告示第1172号
建築基準法第28条の2第二号に規定する石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定める石綿等をあらかじめ添加した建築材料は、次に掲げるもの以外の石綿をあらかじめ添加した建築材料とする。
一 吹付け石綿
二 吹付ロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の0.1%を超えるもの

細かく見ると意外にもいわゆるレベル2~3のアスベスト含有建材については建築基準法による規制の対象外となっています。(※レベル2は耐火被覆材、保温材、断熱材など、レベル3は成形板など)規制対象はレベル1の吹付け材のみ。

そもそもアスベスト含有建材(アスベストを0.1重量%を超えて含有するもの)は労働安全衛生法施行令により、2006年(平成18年)から製造・使用等が全面的に禁止されているので、新築の設計をする場合はあまりアスベストについて気にしなくても良いのです。

よって、建築基準法上アスベストが問題になるのは、2006年(平成18年)以前の吹付けアスベストが使用されている既存建築物を改修する場合がほとんど。具体的には以下の方法で不適格となるのを回避する必要があります。

  1. 分析をかけて告示に適合していることを祈る(含有0.1%以下)
  2. 既存不適格の緩和(法86条の7)が適用できる改修(除去、封じ込め又は囲い込み)をする
  3. あきらめて解体する

いずれにせよ、労基関係や大防法、リサイクル法関係の報告・手続きは忘れずに行いましょう。アスベストは関係法令が多岐にわたるので、それぞれの義務が誰に課されているのかを整理しておかないと痛い目にあいます。。

2022年(令和4年)4月より、一定規模以上の解体及び改修工事については、アスベストの有無に関わらず、事前調査結果を自治体に報告する義務が工事の元請に課されています。(改正大気汚染防止法)

事前調査は「①設計図書その他書面による調査>②目視による調査>③分析による調査」が基本ですが、面及び目視による確認が得られなかった場合で、石綿含有みなしとして作業をする場合は、分析は不要。

また、報告対象となる一定規模以上の工事は以下のとおり。

  1. 解体部分の延べ床面積が80㎡以上の建築物の解体工事
  2. 請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事
  3. 請負金額が税込100万円以上の特定の工作物の解体または改修工事

石綿(アスベスト)は天然の鉱物であり、不燃性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐久性、吸音性、高抗張力などなど優れた物性があることに加え経済性も良かったので、非常に多く出回りました。ただ、繊維状結晶で細かくほぐせるような構造なので、飛散した場合に人が吸入してしまう恐れがあることが発覚し、現在はその使用が禁止されています。

一方、岩綿(ロックウール)は岩石などを主原料として溶融して線維化した人工の鉱物繊維です。耐火性に優れ、断熱材や吸音材として広く使用されていますね。お間違いのないよう。

クロルピリホスに関する規制

クロルピリホスに規制はアスベストとほとんど同じで、令20条の6一号&二号により「原則、建築材料には使かっちゃダメ、ただし告示に定めるものは除かれるの構成です。

建築基準法施行令 第20条の6
建築材料についてのクロルピリホスに関する法第28条の2第三号の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
 建築材料にクロルピリホスを添加しないこと。
 クロルピリホスをあらかじめ添加した建築材料(添加したときから長期間経過していることその他の理由によりクロルピリホスを発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものを除く。)を使用しないこと。

平成14年 国土交通省告示第1112号
 建築基準法施行令第20条の6第1項第二号の規定に基づき、クロルピリホスを発散するおそれがないものとして国土交通大臣が定める建築材料を次のように定める。
 クロルピリホスを発散するおそれがないものとして国土交通大臣が定める建築材料は、クロルピリホスをあらかじめ添加した建築材料のうち、建築物に用いられた状態でその添加から5年以上経過しているものとする。

クロルピリホスを添加してから5年寝かせれば建築材料として使用できるわけですが、そんなのは見たことがありませんね。やはり、基本は「使わない」で理解しましょう。

なお、クロルピリホスの規制は、法28条の2より「居室を有する建築物」に限られて適用されます。よって、倉庫や車庫など居室が無い建築物であれば気にしなくてOKです。(居室の定義について下の記事をご参照ください。)

クロルピリホスは防蟻材として木造住宅の土台に添加されてきましたが、ごぐ微量でも人体に影響があり、通常の換気方法では室内濃度を厚生労働省による指針値以下に制御することが困難であることが分かってきたため、建築基準法によりその使用が原則禁止されました。

ホルムアルデヒドに関する規制

ホルムアルデヒドが3つの化学物質に関する規制の中で、最も厄介です。というのも、建築サイドで「使わない」選択をしても、家具からもホルムアルデヒドが発生することが考えられるため、基本何かしらのホルムアルデヒド対策が必要になるから。

ただし、クロルピリホス同様「居室を有する建築物」に適用されますので、居室が無い建築物の場合は気にしなくてもOKです。

さて、何かしらのホルムアルデヒド対策とは、以下の3つです。簡単に解説していきます。

①内装仕上げの制限
②換気設備設置の義務付け(24時間換気)
③天井裏などの制限

①内装仕上げの制限

「なるべくホルムアルデヒドの発散が少ない建築材料を使用しましょう」という基本的な考え方のもと、その発散量に応じて☆の数で区分された建築材料毎に内装材として使用できる面積が制限されています。(令20条の7)

内装材のカタログで、『F☆☆☆☆』ってよく見かけますよね。この☆が多いほど(MAX星4つまで)ホルムアルデヒド発散量が少ないってことです。

そして、無駄なこと考えたくない方のために簡潔に規制内容をまとめると…。
F☆☆☆☆の建築材料であれば、使用面積は無制限!
F☆☆☆またはF☆☆の建築材料は、居室の種類と換気階数に応じて面積が制限されます。
無等級(☆なし)は使用が禁止されています。

仕上げ表に「使用する建材はF☆☆☆☆とする」ってよく記載しますよね。あれはF☆☆☆以下の建材の使用面積についてはもう何も考えたくないよ、ということです。

F☆☆☆以下をどうしても使いたい場合は、使用できる建材の面積を☆の数ごとにまとめましたので、参考にしてみてください。

居室の種類
換気回数
使用できる建材の面積
F☆☆F☆☆☆
住宅等の居室0.7回/時以上床面積の0.8倍まで床面積の5倍まで
0.5回/時以上床面積の0.3倍まで床面積の2倍まで
その他の居室0.7回/時以上床面積の1.1倍まで床面積の6.6倍まで
0.5回/時以上床面積の0.7倍まで床面積の4倍まで
0.3回/時以上床面積の0.3倍まで床面積の2倍まで

 

②換気設備の設置

①で内装の制限はしましたが、ホルムアルデヒドは家具からも発散するので、F☆☆☆☆のみを使ったとしても、機械換気設備の設置の設置は義務付けられています。(令20条の8)

住宅等の居室の場合、換気回数0.5回/hの24時間換気システムを設置すること。
その他の居室の場合、換気回数0.3回/hの24時間換気システムを設置すること。
※通常使用する換気設備の場合(空気を浄化して供給する方式や中央監理方式以外)

24時間換気は、必ず機械換気とする必要があります。窓などの開口面積を確保するだけじゃダメなんですね。

また、1つの機械換気設備が2以上の居室に係る場合や、アンダーカットや換気ガラリを用いた建具により廊下や便所を全般換気の換気経路として計画する場合で居室と一体であるとみなされる屋内空間がある場合には、その合計の床面積を対象としなければなりません。

③天井裏等の規制

②で機械換気設備の設置を義務付けましたので、必然的に天井裏等(小屋裏、床裏、壁内、物置その他)の空気を室内に吸い込むことになってしまいます。そのため、天井裏等の部分については以下のいずれかの対策を講じなければなりません。(平成15年 告示第274号第1第三号)

区分措置
1.使用材料のよる措置天井裏等の下地等をF☆☆☆以上にする
2.気密層又は通気止めによる措置気密層※や通気止めを設けて、居室と分離する
(※省エネ法 平成25年告示第907号による仕様か同等)
3.機械換気設備等による措置・居室が第1種換気の場合は居室を天井裏等よりも負圧としない
・居室が第2種換気を設ける
・居室が第3種換気の場合は当該換気設備または別の換気設備により天井裏等の換気を行う

 

本記事では、サラッと紹介しているシックハウスの関係規定ですが、その数値的な根拠や具体的な対策方法、設計から施工については、かなり奥の深いので、詳しく解説されている参考書を確認してみてください。計画の根拠について、ビシッと説明できるとかなりイケてる建築士になれます。

まとめ

建築基準法において、規制を受ける化学物質を全て紹介しました。(法28条の2)

  • アスベスト:使用は原則禁止
  • クロルピリホス:居室を有する建築物への使用は原則禁止
  • ホルムアルデヒド:①内装②換気設備③天井裏等の規制への適合が必須

アスベストクロルピリホスは新築で含有建材を使用しなければ気にする規定ではありあません。

ホルムアルデヒドは制限なしのF☆☆☆☆のみを内装や天井裏の下地に使用したとしても換気設備の規定については必ず検討が必要になります。

また、アスベストは関係法令が多いうえ、改修の場合で吹付け材が発見された場合には分析が必要になったり、関係法令の手続きが必要になったりとスケジュールやコストに大きく影響があるため、特に注意が必要です。

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